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言志四録 / 言志後録 第百九十五条 攻めざるを以て攻む

攻者有餘。守者不足。兵法或其然也。余則謂守者有餘。攻者不足。以不攻攻之。攻之上也。

新字:攻者有余。守者不足。兵法或其然也。余則謂守者有余。攻者不足。以不攻攻之。攻之上也。

書き下し

「攻むる者は余り有り、守る者は足らず」と、兵法或は其れ然らん。余は則ち謂ふ、守る者は余り有り、攻むる者は足らず。攻めざるを以て之を攻むるは、攻むるの上なり。

現代語訳

「攻める側には余力があり、守る側は力が足りない」というのは、兵法としてはあるいはそうかもしれない。しかし私は、守る側にこそ余力があり、攻める側は力が足りないと言いたい。攻めないことによって攻めるのが、攻めることの最上である。

解説

兵法の常識を逆転させた一条です。『孫子』形篇には守りと攻めの余裕と不足を論じた句があり、一般には攻める側に勢いがあると考えられます。しかし一斎は、守る者こそ余裕があり、攻める者は足りないと言います。攻める側は兵糧も気力も消耗し、守る側は待つことで力を蓄えられるからでしょう。そして、攻めずに相手を屈服させることこそ最上の攻めだと結びます。孫子の「戦はずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」に通じる考えです。一斎は兵法を人事や処世に読みかえてもいます。競争や交渉で、正面から攻めるより、自らの足元を固めて相手が動くのを待つほうが有利な場面は少なくありません。

この章句が説くこと

兵法守り攻め不戦戦略

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