言志四録 / 言志晩録 第九十一条 世治まりて身を窒ぐは難し
國亂而殉身。易。世治而窒身。難。
新字:国乱而殉身。易。世治而窒身。難。
書き下し
国乱れて身を殉ずるは、易し。世治まりて身を窒ぐは、難し。
現代語訳
国が乱れたときに身を投げ出して殉じるのは、やさしい。世の中が治まっているときに、わが身を慎み欲を抑えて保ち続けるのは、難しい。
解説
乱世に命を捨てるより、治世に身を慎むほうが難しいという逆説の条です。「窒」は『易経』損卦の「忿を懲らし慾を窒ぐ」に通じ、欲を塞いで身を律することと読めます。国難の時には気持ちも高ぶり、一度の決断で身を捧げることができます。ところが泰平の世では、目立つ場面もなく、日々の小さな誘惑に対して長く自分を律し続けなければなりません。華々しい殉死より地味な自制のほうが難しいという指摘は、泰平の武士に向けた一斎の厳しい言葉でしょう。危機のときに奮い立つのは難しくなくても、何事もない平時に規律を保つのは難しい。組織の平時の緩みを考えるときにも示唆を与えます。
この章句が説くこと
自制治世克己平時節操
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