言志四録 / 言志耋録 第百三十七条 世に処して世を避く
避世而處世。似難而易。處世而避世。似易而難。
新字:避世而処世。似難而易。処世而避世。似易而難。
書き下し
世を避けて世に処するは、難きに似て易し。世に処して世を避くるは、易きに似て難し。
現代語訳
世間から身を退いたうえで世を渡るのは、難しそうに見えて実は易しい。世間の中に身を置きながら世俗に染まらずにいるのは、易しそうに見えて実は難しい。
解説
語順を入れ替えただけの二句で、隠者の生き方と、世の中にとどまる者の生き方を比べた一条です。山林に隠れて俗世を離れるのは、思い切りこそ要るものの、いったん離れてしまえば俗事に心を乱される機会は少ない。むしろ難しいのは、仕事や人付き合いのただ中に身を置きながら、名利や世評に心を奪われないことだと一斎は言います。一斎自身、昌平坂学問所の儒官として公の務めを果たしながら学問を続けた人で、その実感がこもっていると読めます。組織の中で日々の調整や駆け引きに関わりつつ、自分の軸を保つ難しさを考えるうえで、示唆に富む一条です。
この章句が説くこと
処世隠逸超然自己の軸
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