言志四録 / 言志晩録 第八十四条 学術方に乖けば自ら戕ふ
靈藥誤用。則斃人。利劒倒柄。則自傷。學術乖方。則自戕。又賊人。
新字:霊薬誤用。則斃人。利劒倒柄。則自傷。学術乖方。則自戕。又賊人。
書き下し
霊薬も誤り用ふれば、則ち人を斃す。利剣も柄を倒にすれば、則ち自ら傷つく。学術も方に乖けば、則ち自ら戕ひ、又人を賊ふ。
現代語訳
よく効く薬でも使い方を誤れば人を死なせてしまう。鋭い剣も柄を逆さに持てば自分を傷つける。学問も進む方向を誤れば、自分を損ない、さらには他人をも害する。
解説
霊薬と利剣という二つの比喩で、学問の危うさを説いた条です。効き目の強い薬ほど誤用すれば命を奪い、よく切れる剣ほど持ち方を誤れば自分を傷つけます。学問も同じで、力があるからこそ方向を誤ると害が大きい。自分の心を損なうだけでなく、他人をも傷つけると一斎は言います。知識を誇って人を見下す、理屈で私欲を正当化する、といった学びの誤用を戒めているのでしょう。昌平坂学問所で多くの門人を育てた一斎は、学問が人を良くも悪くもすることを身近に見ていたはずです。専門知識や分析の技術を持つほど、それを何のために使うのかが問われます。自分の強みの使い道を点検する材料になる一条です。
この章句が説くこと
学問知の誤用方向自戒心術
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