言志四録 / 言志晩録 第七十八条 震気は事業の原
震爲乾陽初起。即氣原也。其發而感離虛。則爲雷霆。觸坎實。則爲地震。於人爲志氣。動天驚地事業。亦不外此震氣。
新字:震為乾陽初起。即気原也。其発而感離虚。則為雷霆。触坎実。則為地震。於人為志気。動天驚地事業。亦不外此震気。
書き下し
震は乾陽の初めて起るたり。即ち気の原なり。其の発して離虚に感ずれば、則ち雷霆と為り、坎実に触るれば、則ち地震と為る。人に於ては志気たり。天を動かし地を驚かすの事業も、亦た此の震気に外ならず。
現代語訳
震(易の卦)は、乾の陽気がはじめて起こったものであり、すなわち気の根源である。それが発して離の虚に感じれば雷となり、坎の実に触れれば地震となる。人においては志気である。天を動かし地を驚かすような大事業も、またこの震の気にほかならない。
解説
前の条に続き、易の卦で天地の現象を説きながら、人の志へとつなげた条です。震の卦は下に一つの陽、上に二つの陰があり、純陽の乾の力が陰の下から初めて動き出す姿を表します。一斎はこれを気の源と見て、中が虚の離に感じれば雷となり、中が実の坎に触れれば地震となると説明します。そしてこの震の気は、人においては志気、つまり何かを成そうと内から奮い立つ気力だと言います。天地を揺るがすほどの事業も、始まりは一人の胸に起こるこの小さな陽の動きなのです。立志を説き続けた一斎が、易の言葉で志の力を語り直した条と言えます。大きな仕事も、最初は一人の奮い立つ思いから始まることを思い起こさせます。
この章句が説くこと
志気易震事業気
関連する章句
-
言志四録・言志録 第百十九条 己に在る者を恃む士は当に己に在る者を恃むべし。動天驚地、極大の事業も、亦都て一己より締造す。
-
言志四録・言志晩録 第八十条 震艮の工夫は一に帰す「其の背に艮まりて其の身を獲ず。其の庭に行きて其の人を見ず」とは、敬以て誠を存するなり。「震は百里を驚かせども、匕鬯を喪はず」とは、誠以て敬を行ふなり。震と艮とは正倒なれども、工夫は一に帰す。
-
言志四録・言志後録 第七十八条 造化は地の功を語る天は気を始めて地は物を造る。天は変じて地は化するなり。是に知る、造化の二字は地の功を語るを。独り人のみ地たるにあらず、万物皆地なり。然れども天気入りて之を主宰するに非ずんば、則ち物活くる能はず、人霊なる能はず。主宰の霊は即ち性なり。
-
言志四録・言志後録 第二百四十三条 志気に老少無し血気には老少有り、志気には老少無し。老人の学を講ずるは、当に益々志気を励ますべし。少壮の人に譲る可からず。少壮の人は春秋富めり。仮令今日学ばずとも、猶ほ来日の償ふ可き有るを容す。老人は則ち真に来日無し。尤も当に今日学ばずして来日有りと謂ふこと勿るべし。易に曰く、「日昃くの離なり。缶を鼓して歌はざれば、則ち大耋の嗟あり」と。此を謂ふなり。偶々感ずる所有り、書して以て自ら警む。(天保八年嘉平月朔録す)
-
言志四録・言志耋録 第二十七条 志は大、工夫は小学者は志大にして、工夫は則ち皆小なるを要す。小とは、事に於ては始たり、物に於ては幾たり。易に云ふ、「復は小にして物を辨ず」と。是れなり。
-
言志四録・言志後録 第百三十二条 男女構精の理震巽の感は気と為り、坎離の交は精と為り、艮兌の合は形と為る。是れ男女精を構ふるの理なり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る