言志四録 / 言志晩録 第五十四条 一篇の好文辞
宇宙間一氣斡旋。開先者必有結後。持久者必有轉化。抑者必揚。滯者必通。一隆一替。必相倚伏。恰是一篇好文辭。
新字:宇宙間一気斡旋。開先者必有結後。持久者必有転化。抑者必揚。滞者必通。一隆一替。必相倚伏。恰是一篇好文辞。
書き下し
宇宙の間は一気の斡旋なり。先を開く者は必ず後を結ぶ有り。久しきを持する者は必ず転化有り。抑ふる者は必ず揚がり、滞る者は必ず通ず。一隆一替、必ず相倚伏す。恰も是れ一篇の好文辞なり。
現代語訳
天地の間は一つの気がめぐり動いているのである。先を切り開くものには必ず後を結ぶものがある。長く続くものには必ず転じ変わるときがある。押さえられたものは必ず揚がり、滞ったものは必ず通じる。盛んになることと衰えることは、必ず互いに寄りかかり潜み合っている。それはちょうど一篇の優れた文章のようである。
解説
宇宙の運行を一篇の文章にたとえた、文章論の締めくくりのような条です。天地は一つの気がめぐって成り立ち、始まりには結びがあり、長く続くものには転換があり、抑えられたものは揚がり、滞るものは通じる。「倚伏」は『老子』の「禍は福の倚る所、福は禍の伏す所」に由来し、盛衰が互いに潜み合うことを言います。起承転結、抑揚、緩急を持つ良い文章は、この宇宙の理と同じ形をしているというのです。易の変化の思想を深く学んだ一斎らしい見方です。業績の好不調や組織の盛衰も、一本調子で続くことはありません。いまが抑えの局面か揚がりの局面かを見る目を持つことは、長く事を続けるうえで支えになるでしょう。
この章句が説くこと
気盛衰変化文章易
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