言志四録 / 南洲手抄
獨得之見似私、人驚其驟至。平凡之議似公、世安其狃聞。凡聽人言、宜虚懷而邀之。勿苟安狃聞可也。
新字:独得之見似私、人驚其驟至。平凡之議似公、世安其狃聞。凡聴人言、宜虚懐而邀之。勿苟安狃聞可也。
書き下し
独得の見は私に似る、人其の驟至に驚く。平凡の議は公に似る、世其の狃聞に安んず。凡そ人の言を聴くは、宜しく虚懐にして之を邀ふべし。狃聞に苟安することなくんば可なり。
現代語訳
独創的な意見は自分勝手に見え、人はその唐突さに驚く。ありふれた議論は公正に見え、世間は聞き慣れた話に安心する。およそ人の言葉を聴くときは、心を空しくして虚心に迎え入れるべきだ。聞き慣れたことに安住しさえしなければよいのである。
解説
新しい意見が受け入れられにくい理由と、聴く側の心得を説いた一条です。独創的な卓見は「自分勝手」に見えて唐突さに驚かれ、逆に平凡な議論は「公正」に見えて、聞き慣れているだけで安心される。つまり人は、正しさよりも「慣れ」で判断しがちだ、というのです。だから人の言を聴くときは、先入観を空にして虚心に迎え入れ、聞き慣れた通念に安住するな、と戒めます。斬新な提案を「奇抜だ」と退け、凡庸な意見を「無難だ」と受け入れる——そんな組織の落とし穴を鋭く突きます。異論を虚心に聴く度量を養う、今日的な一条です。
この章句が説くこと
傾聴虚心独創と平凡先入観
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