言志四録 / 言志後録 第百八十条 気運の盛衰は活易
氣運有小盛衰。有大盛衰。其間亦迭相成倚伏。猶海水有小潮。有大潮。天地間大抵不能逃數。即活易也。
新字:気運有小盛衰。有大盛衰。其間亦迭相成倚伏。猶海水有小潮。有大潮。天地間大抵不能逃数。即活易也。
書き下し
気運に小盛衰有り、大盛衰有り。其の間亦迭ひに相倚伏を成す。猶ほ海水に小潮有り、大潮有るがごとし。天地の間は大抵数を逃るる能はず。即ち活易なり。
現代語訳
時勢の気運には小さな盛衰もあれば、大きな盛衰もある。その間でまた互いに(禍と福が)寄りかかり潜み合う関係をなしている。ちょうど海の水に小潮があり大潮があるようなものである。天地の間のことは、おおむね定まった巡り合わせ(数)から逃れることはできない。これがつまり生きた易である。
解説
時代の気運の盛り上がりと衰えを、海の潮の満ち引きにたとえた一条です。小さな波と大きな波が重なり合い、しかもその中で禍と福が互いに入れ替わる。「倚伏」は『老子』の「禍は福の倚る所、福は禍の伏す所」から来た語です。一斎は、天地の出来事はおおむね「数」、すなわち定まった巡り合わせに従うとし、これを書物の易ではなく、目の前に展開する「活きた易」だと言います。『言志録』冒頭の「傀儡の戯」の条とも通じる運命観ですが、次の条ではそこから備えの必要を説きます。景気や業界の波を読むとき、小さな波と大きな波を分けて見る視点は、今日でも有効でしょう。
この章句が説くこと
気運盛衰易数禍福
関連する章句
-
言志四録・言志晩録 第五十四条 一篇の好文辞宇宙の間は一気の斡旋なり。先を開く者は必ず後を結ぶ有り。久しきを持する者は必ず転化有り。抑ふる者は必ず揚がり、滞る者は必ず通ず。一隆一替、必ず相倚伏す。恰も是れ一篇の好文辞なり。
-
言志四録・言志晩録 第百二十七条 気運に常変有り気運に常変有り。常は是れ変の漸にして、痕迹を見はさず。故に之を常と謂ふ。変は是れ漸の極にして、痕迹を見はす。故に之を変と謂ふ。春秋は是れ常、夏冬は是れ変なるが如し。其の漸と極とを以てなり。人事の常変も、亦気運の常変に係る。故に変革の時に当たりては、天人斉しく変ず。大賢の世に出づる有れば、必ず又大奸の世に出づる有り。其の変を以てなり。常漸の時は、則ち人に於ても亦大賢奸無し。
-
言志四録・南洲手抄人一生遭ふ所、険阻有り、坦夷有り、安流有り、驚瀾有り。是れ気数の自然にして、竟に免るる能はず、即ち易理なり。人宜しく居つて安んじ、玩んで楽しむべし。若し之を趨避せば、達者の見に非ず。
-
言志四録・言志耋録 第六十九条 天地間は都て活道理能く変ず、故に変無し。常に定まる、故に定無し。天地の間は都て是れ活道理なり。
-
言志四録・言志耋録 第八十二条 天運と人事は数に同異無し大にしては世運の盛衰、小にしては人事の栄辱、古往今来、皆旋転して移る。猶ほ五星の行に、順有り逆有りて、以て太陽と相会するがごとし。天運と人事と、数に同異無し。知らざるべからざるなり。
-
言志四録・言志録 第二百四十二条 生も活なり、死も亦活なり物は固より活なり。事も亦活なり。生は固より活なり。死も亦活なり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る