言志四録 / 言志後録 第九十九条 天地未だ嘗て一気を減ぜず
古往今來。生生不息。精氣爲物。天地未嘗增一物。游魂爲變。天地未嘗減一氣。
新字:古往今来。生生不息。精気為物。天地未嘗增一物。游魂為変。天地未嘗減一気。
書き下し
古往今来、生生として息まず。精気物と為る、天地未だ嘗て一物を増さず。游魂変を為す、天地未だ嘗て一気を減ぜず。
現代語訳
昔から今に至るまで、万物は次々と生まれ続けてやむことがない。精気が集まって物となるが、それで天地が一つの物を増やしたことはない。魂が遊離して変化する(死ぬ)が、それで天地が一つの気を減らしたこともない。
解説
『易』繋辞上伝の「精気物と為り、游魂変を為す」を踏まえ、生と死を気の集散として説いた条です。気が凝り集まれば物が生まれ、散じれば死となりますが、それは気の形が変わるだけで、天地全体としては何も増えも減りもしない、と一斎は言います。北宋の張載が説いた、気が集まって万物となり散じて太虚に帰るという考えにも通じます。生生してやまないという天地の働きの中では、個々の生死も大きな循環の一こまにすぎません。晩年に至るまで死生の問題を考え続けた一斎の、落ち着いた死生観がうかがえます。自分一人の成功や失敗、あるいは人の入れ替わりを、より大きな流れの中に置いて眺めてみる視点を与えてくれる一条です。
この章句が説くこと
死生観気生生循環易
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