言志四録 / 言志晩録 第十六条 真の是非は自ら覔む
人皆在是非窠中送日。然多是日間瑣事。不過利害得失數件。如眞是非。則無人討出來。學者須能自覔。
新字:人皆在是非窠中送日。然多是日間瑣事。不過利害得失数件。如真是非。則無人討出来。学者須能自覔。
書き下し
人皆、是非の窠中に在りて日を送る。然れども多くは是れ日間の瑣事にして、利害得失の数件に過ぎず。真の是非の如きは、則ち人の討ね出し来る無し。学者は須らく能く自ら覔むべし。
現代語訳
人はみな、是か非かを争う巣の中にいて日々を送っている。しかしその多くは日常の些細な事で、利害や損得の数件にすぎない。本当の是非ということになると、それを探し出してくる人はいない。学ぶ者は必ず、自らそれをよく探し求めなければならない。
解説
人は毎日是非の中で暮らしているが、その多くは日常の些事や損得の話にすぎない、と一斎は指摘します。窠中は巣の中、つまり抜け出せない狭い枠の中というほどの意味です。どちらが得か、どちらが正しいかと言い合っていても、それは利害得失の数件に過ぎず、人としてどうあるべきかという本当の是非を問う人はほとんどいない。だから学ぶ者は、自らそれを探し求めよと促します。日々の議論の大半が損得の調整であることは今も変わりません。会議で正しさを争っている事柄が、本当の是非なのか、利害の言い換えなのかを見分けること。それが判断の質を上げる第一歩になりそうです。
この章句が説くこと
是非利害判断自得本質
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