言志四録 / 言志晩録 第十二条 一知は嵐霧の指南
人心之靈。莫不有知。只此一知。即是靈光。可謂嵐霧指南。
新字:人心之霊。莫不有知。只此一知。即是霊光。可謂嵐霧指南。
書き下し
人心の霊は、知有らざる莫し。只だ此の一知、即ち是れ霊光なり。嵐霧の指南と謂ふ可し。
現代語訳
人の心の霊妙な働きには、知がないということはない。ただこの一つの知こそが、霊妙な光である。立ちこめる山の霧の中で道を示す羅針盤というべきものである。
解説
人の心には必ず知る働きがあり、その一点の知こそが霊光であって、深い霧の中の指南車(方角を示す器具)のようなものだ、と説く条です。この「知」は、王陽明の良知、すなわち誰もが生まれつき持つ善悪を知る心に重なります。嵐霧は山にかかる濃い霧のことで、迷いや混乱の比喩です。どれほど状況が見通せなくても、自分の中の良知という羅針盤は失われていない。言志晩録の「一燈を提げて暗夜を行く」の条とも響き合う考えです。先行きが不透明で情報も錯綜するとき、外の答えを探し回る前に、自分の良心がどちらを指しているかを確かめる。その一手間が判断の軸になります。
この章句が説くこと
良知霊光判断迷い指針
関連する章句
-
『驢鞍橋』卷上卯の夏夜話に曰く、我分別いつとなく失せ、慮知抔と云ふことなし。然る間云ひ損ひも有らんず事ぢやが、出次第に働きて、此年迄来れとも間に合はぬ事無し。総して若き時より無分別なる性也。然れども元より事の談合肝要の時に至ては、何たる分別者よりも我一言に究むる事多し。我もいな事に思ふ也。但しつゝきれて云ふ心か、夫れは元より中中强い位有り、事の談合に及んでは、聞くと早や胸すはつてつゝきれて云はるゝと也。
-
『酔古堂剣掃』集醒・事に任ずる者は利害の慮を忘る事を議する者は身事の外に在り、宜しく利害の情を悉すべし。事に任ずる者は身事の中に居り、當に利害の慮を忘るべし。
-
孫子・地形篇卒を視ること嬰児の如し、故に之と深谿に赴くべし。卒を視ること愛子の如し、故に之と俱に死すべし。厚くして使う能わず、愛して令する能わず、乱れて治むる能わざれば、譬えば驕子の若く、用うべからざるなり。
-
『正法眼蔵随聞記』巻一亦云く、大衆不対の時、我れ南泉ならば、大衆既に道不得と云て、便ち猫児を放下してまじ、古人の云く、大用現前して軌則を存せずと、
-
『囲炉夜話』第二百三則・必ず諸を心に問ふ言は盡くは信ず可からず、必ず諸を理に揆る。事は未だ遽かに行ふ可からず、必ず諸を心に問ふ。
-
『酔古堂剣掃』集醒・多情の者は與に妍媸を定むべからず多情の者は、與に妍媸を定むべからず。多誼の者は、與に取與を定むべからず。多氣の者は、與に雌雄を定むべからず。多興の者は、與に去住を定むべからず。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る