言志四録 / 言志晩録 第十条 心有るを認め心無きを認む
學者當先自認己有心。而後存養得力。又當自認己無心。而後存養見効。
新字:学者当先自認己有心。而後存養得力。又当自認己無心。而後存養見効。
書き下し
学者は当に先づ自ら己に心有るを認めて、而る後に存養力を得べし。又当に自ら己に心無きを認めて、而る後に存養効を見るべし。
現代語訳
学ぶ者は、まず自分に心があることを自ら認めて、そうしてはじめて心を保ち養う工夫に力が入る。また、自分に心がないことを自ら認めて、そうしてはじめて心を保ち養う工夫に効き目が現れる。
解説
心を保ち養う「存養」の工夫を二段階で示した、逆説めいた条です。まず自分に心があることを自覚しなければ、何を守り育てればよいのか分からず、存養に力が入りません。しかし一方で、心を固定した何かとして握りしめていると、とらわれが生じます。心が無い、つまり私心やこだわりとしての心を持たない境地を認めたとき、はじめて存養の効果が現れる、と一斎は言います。前の条の、物有るに似て物無きに似たりという心の描写とつながる考え方です。意識して取り組む段階と、意識を手放す段階。技能の習得でも、型を自覚して身につけ、やがて型を忘れて自在になるという順序に重なるものがあります。
この章句が説くこと
存養心無心修養自覚
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