言志四録 / 言志後録 第二百二十三条 自利の一念
今之欲爲君興利者。非不焦心苦思。然有自利一念挿在其間。則君利竟不能興。
新字:今之欲為君興利者。非不焦心苦思。然有自利一念挿在其間。則君利竟不能興。
書き下し
今の君の為に利を興さんと欲する者、心を焦し思ひを苦しめざるに非ず。然れども自利の一念其の間に挿在すること有れば、則ち君の利竟に興す能はず。
現代語訳
今、主君のために利益を起こそうとする者は、心を焦がし思いを苦しめていないわけではない。しかし、自分の利益を図る一念がその間に少しでも挟まっていれば、主君の利益は結局起こすことができない。
解説
当時の諸藩は財政難に苦しみ、多くの役人が藩の財政再建に取り組んでいました。一斎は、その人々が懸命に知恵を絞っていることは認めます。しかし、そこに自分の手柄や利益を求める一念が少しでも混じれば、主君の利益は結局実現しないと言います。自利の心があると、判断が自分に都合のよい方向へ曲がり、周囲も本気で協力しなくなるからです。前条の「自ら欺かず」と同じく、事の成否を心のあり方に見る考えです。会社や組織のための改革といいながら、自分の評価や出世が動機の中心になっていないか。どれほど努力しても成果が出ないとき、自分の動機を点検してみる材料になる条です。
この章句が説くこと
私心理財為政公私
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