言志四録 / 言志後録 第百八十四条 唯だ清白を守る
雞鳴而起。人定宴息。門內肅然。書聲滿室。道行妻子恩及臧獲。家無酒氣。廩有餘粟。豐不至奢。儉不至嗇。俯仰無愧。唯守淸白。各有其分。如是亦足。
新字:鶏鳴而起。人定宴息。門内粛然。書声満室。道行妻子恩及臧獲。家無酒気。廩有余粟。豊不至奢。倹不至嗇。俯仰無愧。唯守清白。各有其分。如是亦足。
書き下し
鶏鳴にして起き、人定まりて宴息す。門内粛然として、書声室に満つ。道は妻子に行はれ、恩は臧獲に及ぶ。家に酒気無く、廩に余粟有り。豊かなるも奢に至らず、倹なるも嗇に至らず。俯仰愧づる無く、唯だ清白を守る。各其の分有り、是くの如くんば亦足る。
現代語訳
鶏が鳴けば起き、夜が更けて人が寝静まる頃に休む。家の中は引き締まって静かで、書を読む声が部屋に満ちている。道は妻子にまで行き渡り、恩は召使いにまで及ぶ。家には酒の気配がなく、米蔵には余分の穀物がある。豊かであっても贅沢には至らず、倹約しても吝嗇には至らない。天を仰いでも地に伏しても恥じるところがなく、ただ清廉潔白を守る。人それぞれに分があり、このようであればそれで十分である。
解説
一斎が理想とした士人の家庭の姿を、四字句を連ねて描いた一条です。早起きして夜はきちんと休み、家の中は静かで読書の声が響く。道は妻子に、恩は使用人にまで及び、酒に溺れず、蔵には蓄えがある。豊かでも奢らず、倹約しても吝嗇にならない。『孟子』の「仰いで天に愧ぢず、俯して人に怍ぢず」を踏まえ、ただ清廉を守るだけで十分だと結びます。「各其の分有り」とあるように、富貴を望むのではなく、それぞれの分に応じた暮らしで足りるという知足の思想です。仕事の成果を追い求める日々の中で、自分の生活の土台が整っているかを振り返る材料になるでしょう。
この章句が説くこと
家庭清廉倹約知足修身
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