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言志四録 / 言志後録 第百五十六条 時宜を斟酌する礼

邦俗喪祭。都用浮屠。冠婚。依遵勢笠兩家。在吾輩則自當用儒禮。而漢土古禮。今不可行。須斟酌時宜。別創一家儀注。喪祭。余嘗著哀敬編。冠禮。亦有小著。務要簡切明白。使人易行耳。獨婚禮則事涉兩家。勢不得如意。當以漸與別爲要。

新字:邦俗喪祭。都用浮屠。冠婚。依遵勢笠両家。在吾輩則自当用儒礼。而漢土古礼。今不可行。須斟酌時宜。別創一家儀注。喪祭。余嘗著哀敬編。冠礼。亦有小著。務要簡切明白。使人易行耳。独婚礼則事渉両家。勢不得如意。当以漸与別為要。

書き下し

邦俗の喪祭は、都て浮屠を用ひ、冠婚は、勢笠両家に依遵す。吾輩に在りては則ち自ら当に儒礼を用ふべし。而れども漢土の古礼は、今行ふべからず。須らく時宜を斟酌して、別に一家の儀注を創むべし。喪祭は、余嘗て哀敬編を著す。冠礼も、亦小著有り。務めて簡切明白にして、人をして行ひ易からしむるを要するのみ。独り婚礼は則ち事両家に渉り、勢ひ意の如くなるを得ず。当に漸と別とを以て要と為すべし。

現代語訳

わが国の風習では、葬儀と祭祀はすべて仏式で行い、元服と婚礼は伊勢・小笠原の両家(武家礼法の家)の作法に従っている。我々儒者はもちろん儒教の礼を用いるべきである。しかし中国の古礼は、今そのまま行うことはできない。時宜を斟酌して、別に一家の儀式の次第を作るべきである。葬祭については、私は以前『哀敬編』を著した。冠礼についても小さな著作がある。つとめて簡潔で要を得た明白なものにし、人が行いやすいようにすることが肝要なだけである。ただ婚礼だけは、事が両家にかかわるので、なかなか思いどおりにはいかない。「漸」(順を追って進めること、『易』漸卦)と「別」(夫婦のけじめ)とを要とすべきである。

解説

儒者として冠婚葬祭をどう行うかを論じた一条です。江戸時代、葬祭は寺請制度のもとで仏式が当たり前であり、元服や婚礼は伊勢家・小笠原家という武家礼法の家の作法に従うのが通例でした。儒者は本来儒礼によるべきですが、中国古代の礼をそのまま行うのは無理がある。そこで一斎は、時宜を斟酌して自家の儀式次第を作り、葬祭については『哀敬編』を著したと述べます。要は簡潔明白で、人が実際に行いやすいことでした。婚礼だけは相手の家もあるため思うようにいかず、段取りを踏む「漸」と、夫婦のけじめである「別」の精神を守れば足りるとしています。理念を貫きつつ現実に合わせて形を作り直すという、制度設計の姿勢がうかがえます。

この章句が説くこと

礼時宜儀式簡素慣習

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