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言志四録 / 言志後録 第百三十五条 五行並び下る勿れ

讀書。宐澄心端坐。寛著意思。乃爲有得。五行並下。何其心之忙邪。作文。宐命意立言。一字不苟。乃爲無瑕。千言立成。何其言之易邪。學者其勿徒效顰才人。以陷於忙與易。

新字:読書。宐澄心端坐。寛著意思。乃為有得。五行並下。何其心之忙邪。作文。宐命意立言。一字不苟。乃為無瑕。千言立成。何其言之易邪。学者其勿徒効顰才人。以陥於忙与易。

書き下し

書を読むには、宜しく心を澄まし端坐し、意思を寛著すべし。乃ち得ること有りと為す。五行並び下る、何ぞ其の心の忙しきや。文を作るには、宜しく意を命じ言を立て、一字も苟もせざるべし。乃ち瑕無しと為す。千言立ちどころに成る、何ぞ其の言の易きや。学者其れ徒らに才人に效顰して、以て忙と易とに陥ること勿れ。

現代語訳

書物を読むときは、心を澄ませて姿勢を正して座り、気持ちをゆったりと落ち着けて読むべきである。そうしてこそ得るところがある。五行を一度に読み下すなどというのは、なんと心のせわしないことか。文章を作るときは、主意を定め言葉を立てて、一字もおろそかにしてはならない。そうしてこそ瑕のない文になる。千字の文がたちどころに出来上がるなどというのは、なんと言葉の軽々しいことか。学ぶ者は、いたずらに才人のまねをして(顰みに倣って)、せわしなさと軽々しさに陥ってはならない。

解説

読書と作文の心得を対にして説いた一条です。「五行並び下る」は五行を同時に読み下す速読、「千言立ちどころに成る」は長文を即座に書き上げる速筆のことで、いずれも古来才人の逸話として称えられてきました。一斎はそれを「忙」と「易」、つまり心のせわしなさと言葉の軽さとして退けます。読むときは心を澄ませてゆったりと、書くときは主意を定めて一字もおろそかにしない。「效顰」は、美人西施が眉をひそめるのをまねた醜女の故事で、才人の真似をしても才人にはなれないという皮肉です。速く読み速く書くことが評価されがちな職場でも、一文を丁寧に読み、一語を吟味して書くことの価値を見直すきっかけになります。

この章句が説くこと

読書作文丁寧さ才人効顰

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