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言志四録 / 言志後録 第二百三十九条 書は妄りに読む可からず

余弱冠前後。銳意讀書。欲目空千古。及過中年。一旦悔悟。痛戒外馳。務從內省。然後自覺稍有所得。不負於此學。今則老矣。少壯所讀書。過半遺忘。茫如夢中事。稍留在胸臆。亦落落不成片段。益悔半生費力無用。今而思之。書不可妄讀。必有所擇且熟可也。只要終身受用足矣。後生勿蹈我悔。

新字:余弱冠前後。鋭意読書。欲目空千古。及過中年。一旦悔悟。痛戒外馳。務従内省。然後自覚稍有所得。不負於此学。今則老矣。少壮所読書。過半遺忘。茫如夢中事。稍留在胸臆。亦落落不成片段。益悔半生費力無用。今而思之。書不可妄読。必有所択且熟可也。只要終身受用足矣。後生勿蹈我悔。

書き下し

余弱冠の前後、鋭意読書し、目に千古を空しうせんと欲す。中年を過ぐるに及び、一旦悔悟し、痛く外馳を戒め、務めて内省に従ふ。然る後自ら稍得る所有りて、此の学に負かざるを覚ゆ。今は則ち老いたり。少壮に読む所の書、過半遺忘し、茫として夢中の事の如し。稍胸臆に留まるも、亦落落として片段を成さず。益々半生力を費して用無きを悔ゆ。今にして之を思へば、書は妄りに読む可からず。必ず択ぶ所有りて且つ熟して可なり。只終身受用するに足るを要するのみ。後生我が悔を踏むこと勿れ。

現代語訳

私は二十歳前後のころ、熱心に読書に打ち込み、古今の書物をすべて読み尽くして眼中に無いほどにしようと思った。中年を過ぎたころ、あるとき悔い悟って、心が外に走ることを強く戒め、努めて内省に従うようになった。そうしてはじめて、自分なりにいくらか得るところがあり、この学問に背かずにすんだと感じた。今はもう年老いた。若いころに読んだ書物は、大半を忘れてしまい、ぼんやりとして夢の中の出来事のようである。わずかに胸中に残っているものも、ばらばらでまとまりをなさない。半生の力を費やして役に立たなかったことを、ますます悔やんでいる。今になって考えると、書物はむやみに読んではならない。必ず選ぶところがあり、しかもよく熟読するのがよい。ただ一生涯かけて使うに足るものであればよいのである。後進の者は、私の悔いを繰り返してはならない。

解説

一斎が自らの読書遍歴を振り返り、後進に遺した忠告です。若いころは古今の書を読み尽くそうと意気込みましたが、中年を過ぎて、知識を外に求めることを戒め内省に向かって、はじめて学問の手応えを得たと言います。そして老いた今、若いころ読んだ本の大半は夢のように忘れ、残ったものも断片にすぎないと認めます。そこから得た結論は、書物は選んで熟読し、一生使えるものを身につければよいということでした。第四四七条で唐書の大半を忘れていたと記したのと響き合う、実感のこもった言葉です。情報を大量に取り込むことが学びだと思いがちな今、何を選び、どれだけ深く読んでいるかを振り返る材料になる条です。

この章句が説くこと

読書内省精読悔悟学問

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