言志四録 / 言志後録 第百三十四条 煙茶を嗜む自戒
酒。是水火之合。水其形而火其氣也。故體軀喜之。煙茶起於近代。然人亦多好之。以茶能發水之味。煙能和火之味也。然不可多服。多服則害人。況於酒害尤甚。余嗜煙茶。故書以自戒。
新字:酒。是水火之合。水其形而火其気也。故体躯喜之。煙茶起於近代。然人亦多好之。以茶能発水之味。煙能和火之味也。然不可多服。多服則害人。況於酒害尤甚。余嗜煙茶。故書以自戒。
書き下し
酒は、是れ水火の合なり。水は其の形にして火は其の気なり。故に体軀之を喜ぶ。煙茶は近代に起る。然れども人亦多く之を好む。茶は能く水の味を発し、煙は能く火の味を和するを以てなり。然れども多く服すべからず。多く服すれば則ち人を害す。況んや酒に於ては害尤も甚だし。余煙茶を嗜む。故に書して以て自ら戒む。
現代語訳
酒は水と火が合わさったものである。水がその形であり、火がその気である。だから体はこれを喜ぶ。煙草と茶は近い時代に広まったものだが、人はやはり多くこれを好む。茶は水の味を引き出し、煙草は火の味を和らげるからである。しかし多く用いてはならない。多く用いれば人を害する。まして酒の害はいっそう甚だしい。私は煙草と茶を好むので、書き記して自らの戒めとする。
解説
前条の水火論を、酒・煙草・茶という身近な嗜好品に当てはめた一条です。酒は水の形に火の気を宿したもので、だから体が喜ぶ。茶は水の味を引き出し、煙草は火の味を和らげる。人がこれらを好むのは体の理にかなったことだと、一斎はまず認めます。そのうえで、過ぎれば害になり、酒の害はとりわけ甚だしいと続け、最後に「余煙茶を嗜む。故に書して以て自ら戒む」と、自分の好みを率直に明かしています。高みから人に説くのではなく、自分の弱点を知ったうえでの自戒として書かれている点に、この書の性格がよく表れています。好きなものを断つのでなく、好きだからこそ量を知る。自分の習慣と向き合うときの、無理のない姿勢を示しています。
この章句が説くこと
自戒節度嗜好養生水火
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