言志四録 / 南洲手抄
人皆知問身之安否、而不知問心之安否。宜自問能不欺闇室否、能不愧衾影否、能得安穩快樂否。時時如是、心便不放。
新字:人皆知問身之安否、而不知問心之安否。宜自問能不欺闇室否、能不愧衾影否、能得安穏快楽否。時時如是、心便不放。
書き下し
人は皆身の安否を問ふことを知つて、而かも心の安否を問ふことを知らず。宜しく自ら能く闇室を欺かざるや否や、能く衾影に愧ぢざるや否や、能く安穏快楽を得るや否やと問ふべし。時時是の如くば心便ち放たず。
現代語訳
人はみな体の調子を気づかうことは知っているが、心の調子を気づかうことを知らない。自分にこう問うべきだ——暗い部屋で一人のときも良心を欺いていないか、寝床でのひとり寝の影に恥じることはないか、心は安らかで快いか、と。折にふれてこう問えば、心は放たれずに保たれる。
解説
体の健康は気にするのに、心の健康は顧みない——そんな私たちに、心の自己点検を促す一条です。一斎は三つの問いを挙げます。誰も見ていない暗室で良心を欺いていないか(不欺闇室)、独り寝の枕元に恥じることはないか(不愧衾影)、心は安らかか。いずれも「誰も見ていない場面での自分」を問うもので、慎独の思想そのものです。折にふれてこう自問すれば、心は迷い出ず、しっかり保たれる。健康診断のように心を点検する習慣を勧める、実践的で今日的な一条です。
この章句が説くこと
慎独心の点検良心セルフケア