言志四録 / 言志後録 第八十三条 対症して補瀉す
學者有不嗜讀書者。督之勵精讀書。有大耽讀書者。敎之靜坐自省。是則對症而補瀉之耳。
新字:学者有不嗜読書者。督之励精読書。有大耽読書者。教之静坐自省。是則対症而補瀉之耳。
書き下し
学者に読書を嗜まざる者有れば、之を督して読書に励精せしむ。大いに読書に耽る者有れば、之に教へて静坐自省せしむ。是れ則ち症に対して之を補瀉するのみ。
現代語訳
学ぶ者の中に読書を好まない者がいれば、これを励まして読書に精を出させる。ひどく読書にふける者がいれば、これに教えて静かに座って自らを省みさせる。これは病の症状に応じて、足りないものを補い、余っているものを瀉す(取り除く)ようなものである。
解説
教え方は相手によって変えるべきだという、教育者一斎の実感がこもった条です。本を読まない者には読書を勧め、本に溺れる者には本を置いて静坐し自分を省みるよう勧める。医者が虚した体には補い、実した体からは瀉す(出す)ように、同じ処方を誰にでも与えるのではなく、偏りを見て正すのです。孔子が同じ問いにも弟子によって違う答えを返したこと(『論語』先進篇)にも通じます。昌平坂学問所で多くの門人を育てた一斎は、読書を重んじながらも、読書だけでは学問にならないことを知っていました。部下や後輩を育てるとき、その人に今足りないものと過剰なものを見極めているかを振り返らせる一条です。
この章句が説くこと
教育読書静坐対症人を育てる
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