言志四録 / 言志後録 第四十八条 歴代の史書を読む
人一生履歴。除幼時與老後。率不過四五十年間。其所聞見。殆不足一史。故宜讀歷代史書。上下數千年事迹。羅在胸臆。不亦爲快乎。著眼處最在人情事變上。
新字:人一生履歴。除幼時与老後。率不過四五十年間。其所聞見。殆不足一史。故宜読歴代史書。上下数千年事迹。羅在胸臆。不亦為快乎。著眼処最在人情事変上。
書き下し
人の一生の履歴は、幼時と老後とを除けば、率ね四五十年の間に過ぎず。其の聞見する所、殆ど一史に足らず。故に宜しく歴代の史書を読むべし。上下数千年の事迹、羅ねて胸臆に在らば、亦快と為さずや。眼を著くる処は、最も人情事変の上に在り。
現代語訳
人の一生の経歴は、幼いときと年老いてからを除けば、おおむね四、五十年にすぎない。その間に見聞きすることは、一つの時代の歴史にも足りない。だから歴代の歴史書を読むのがよい。上下数千年の出来事が胸の内に並んでいるとしたら、なんと愉快なことではないか。目をつけるべきところは、何よりも人の心の動きと事態の移り変わりにある。
解説
歴史を読む意義を、人の一生の短さから説き起こした一条です。一人が実際に見聞きできる期間は四、五十年ほどで、一つの王朝の歴史にも届かない。だから史書を読めば、数千年分の経験を自分の胸に収めることができる、と一斎は言います。そして読み方の要として、年代や制度より「人情事変」、つまり人の心の動きと事態の変化に目をつけよと付け加えています。前後の条で明の滅亡を論じているのも、まさにその実践でしょう。歴史は暗記の対象ではなく、自分一人では経験しきれない人間の判断と結果の見本帳だということです。限られた自分の経験だけで判断していないかを問い直させてくれます。
この章句が説くこと
読書歴史人情事変経験学問
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