言志四録 / 言志後録 第四十五条 一夜を宿して思惟す
凡遇大硬事。不消急心剖决。須姑舍之。宿一夜。於枕上粗商量一半。齎思而寢。及翌旦淸明時。續思惟之。則必恍然見一條路。就即義理自然湊泊。然後徐區處之。大概不致錯誤。
新字:凡遇大硬事。不消急心剖決。須姑舎之。宿一夜。於枕上粗商量一半。齎思而寝。及翌旦清明時。続思惟之。則必恍然見一条路。就即義理自然湊泊。然後徐区処之。大概不致錯誤。
書き下し
凡そ大硬事に遇はば、急心に剖決するを消ひず。須らく姑く之を舎き、一夜を宿し、枕上に於て粗ぼ一半を商量し、思ひを齎して寝ね、翌旦清明の時に及びて、続けて之を思惟すべし。則ち必ず恍然として一条の路を見ん。就即ち義理自然に湊泊す。然る後に徐ろに之を区処せば、大概錯誤を致さず。
現代語訳
およそ大きく難しい事に出会ったときは、急いで決着をつける必要はない。しばらくそのまま置いて一晩寝かせ、枕の上でおおよそ半分ほど考えをめぐらせ、思いを抱いたまま眠り、翌朝の頭が澄んでいるときに続けて考えるのがよい。そうすれば必ず、はっと一筋の道が見えてくる。そこで筋道がおのずと寄り集まって定まる。そのうえでゆっくりと処置すれば、たいてい誤ることはない。
解説
難題に直面したときの判断の作法を、きわめて具体的に述べた一条です。焦って即断せず、いったん置いて一晩寝かせる。ただし放り出すのではなく、寝る前に半分ほど考えておき、思いを抱えたまま眠る。そして翌朝、頭が澄んだときに続きを考えると、ふっと道筋が見え、理屈がおのずと収まるべきところに収まる。現代で言う「寝かせる」「インキュベーション」の効用を、一斎は経験から知っていたのでしょう。大切なのは、翌朝に見えた道筋のあとも「徐ろに」処置せよと念を押している点です。重大な決断ほど、急ぎたい気持ちと考え抜く時間との釣り合いをどう取るかが問われることを示しています。
この章句が説くこと
意思決定熟慮判断思考法
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