言志四録 / 言志後録 第四十二条 直を以て怨みに報ゆ
以直報怨。要善看。只是以直待之。不相讎耳。
書き下し
「直を以て怨みに報ゆ」は、善く看るを要す。只だ是れ直を以て之を待ち、相讎とせざるのみ。
現代語訳
論語の「まっすぐな心で怨みに報いる」という言葉は、よく読み取らなければならない。それはただ、公正な態度で相手に接し、互いに仇としないというだけのことである。
解説
論語憲問篇で、「徳を以て怨みに報いる」のはどうかと問われた孔子は、「何を以てか徳に報いん。直を以て怨みに報い、徳を以て徳に報ゆ」と答えました。この「直」をどう読むかについて、一斎は、仕返しをすることでも、無理に恩で返すことでもなく、公正にありのまま接し、相手を仇としないことだと説明します。恨みを抱いた相手にも、私情を交えず、正当な評価と扱いをする。それ以上でも以下でもない、ということです。報復に走るのも、感情を押し殺して過度に寛大になるのも不自然だという孔子の中庸を、一斎は簡潔に言い当てています。職場で関係のこじれた相手との接し方を考える材料になります。
この章句が説くこと
直怨み公正論語人間関係
関連する章句
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論語・憲問篇或るひと曰く、「徳を以て怨みに報ゆるは、何如」と。子曰く、「何を以てか徳に報いん。直を以て怨みに報い、徳を以て徳に報ゆ」と。
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菜根譚・前集怨みは徳に因りて彰る。故に人をして我を徳とせしむるは、徳と怨みとの両つながら忘るるに若かず。仇は恩に因りて立つ。故に人をして恩を知らしむるは、恩と仇との俱に泯(ほろ)ぶるに若かず。
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『呻吟語』外篇・治道・公正の二字公正の二字は是れ世界を撐持し底る。這の二字沒し了はれば、便ち天を塌さん。
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説苑・說叢命を知る者は天を怨みず、己を知る者は人を怨みず。人にして愛せざれば則ち仁なる能わず、佞にして巧ならざれば則ち信なる能わず。善を言うに身に及ぶ毋かれ、惡を言うに人に及ぶ毋かれ。上清くして欲無ければ、則ち下正しくして民樸なり。來事は追うべきなり、往事は及ぶべからず。思慮の心無ければ則ち達せず、談說の辭無ければ則ち樂しからず。
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『呻吟語』内篇・修身・圭角を露はすは大病痛才かに一段の公直の氣有りて、言を出だし事を做すに便ち圭角を露はすは、是れ大病痛なり。
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史記 蒙恬列伝趙高は、諸趙の疏遠の属なり。趙高の昆弟数人、皆隠宮に生まれ、其の母刑僇せられ、世世卑賤なり。秦王、高の彊力にして獄法に通ずるを聞き、挙げて以て中車府令と為す。高既に私かに公子胡亥に事へ、之に決獄を喩す。高大罪有り。秦王蒙毅をして法もて之を治めしむ。毅敢て法を阿らず、高の罪死に当つとし、其の宦籍を除く。帝、高の事に敦きを以て、之を赦し、其の官爵を復す。始皇天下に游ばんと欲し、九原に道して、直ちに甘泉に抵らんとし、乃ち蒙恬をして道を通ぜしむ。九原より甘泉に抵るまで、山を塹り谷を堙むること、千八百里。道未だ就らず。始皇の三十七年冬、行きて出でて会稽に游び、海上に并ひて、北のかた瑯邪に走る。道にて病み、蒙毅をして還りて山川に禱らしむ。未だ反らず。始皇沙丘に至りて崩ず。之を秘し、群臣知る莫し。是の時丞相李斯・公子胡亥・中車府令趙高常に従ふ。高雅より胡亥に幸せられ、之を立てんと欲す。又蒙毅の法もて之を治めて己の為にせざるを怨む。因りて賊心有り、乃ち丞相李斯・公子胡亥と陰謀し、胡亥を立てて太子と為す。太子已に立ち、使者を遣はして罪を以て公子扶蘇・蒙恬に死を賜ふ。扶蘇已に死す。蒙恬疑ひて復た之を請ふ。使者蒙恬を以て吏に属し、更めて置く。胡亥、李斯の舎人を以て護軍と為す。使者還りて報ず。胡亥已に扶蘇の死を聞き、即ち蒙恬を釈さんと欲す。趙高、蒙氏の復た貴くして事を用ひんことを恐れ、之を怨む。毅還りて至る。趙高因りて胡亥の為に忠計すると為し、以て蒙氏を滅ぼさんと欲し、乃ち言ひて曰く、「臣聞く、先帝賢を挙げて太子を立てんと欲すること久し。而るに毅諫めて曰く『不可なり』と。若し賢を知りて俞ほ立てずんば、則ち是れ不忠にして主を惑はすなり。臣の愚意を以てすれば、之を誅するに若かず」と。胡亥聴きて蒙毅を代に系ぐ。前に已に蒙恬を陽周に囚ふ。喪咸陽に至り、已に葬り、太子立ちて二世皇帝と為る。而して趙高親近し、日夜蒙氏を毀悪し、其の罪過を求め、之を挙劾す。
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