言志四録 / 言志後録 第三十一条 闇然として日に章かなり
收斂精神時。自覺如閉聰明。然及熟後。則闇然日章。機心酬酢時。自覺聰明通達。然稔以成習。則的然日亡。
新字:収斂精神時。自覚如閉聰明。然及熟後。則闇然日章。機心酬酢時。自覚聰明通達。然稔以成習。則的然日亡。
書き下し
精神を収斂する時は、自ら覚ゆること聡明を閉づるが如し。然れども熟するに及びて後は、則ち闇然として日に章かなり。機心もて酬酢する時は、自ら覚ゆること聡明通達するが如し。然れども稔りて以て習ひと成れば、則ち的然として日に亡ぶ。
現代語訳
精神を内に引き締めるときは、自分では聡明さを閉ざしてしまうように感じる。しかし修養が熟したのちには、目立たないながら日ごとに輝きを増していく。はかりごとの心(機心)で人とやりとりするときは、自分では聡明で何にでも通じているように感じる。しかしそれが積もって習い性となると、はじめは目立ってもしだいに日ごとに失われていく。
解説
中庸の「君子の道は闇然として日に章かに、小人の道は的然として日に亡ぶ」を踏まえた一条です。心を内に収めて慎む修養は、はじめは頭の働きを鈍らせるように感じられますが、熟せば地味なまま日ごとに光を増す。反対に、機心、つまり駆け引きや計算で人と応対すると、その場では自分が冴えているように感じるものの、それが癖になると、はっきり目立っていたものがしだいに失われていく。一斎は、手応えの感覚と実際の成長とが逆になりうることを指摘しています。その場で賢く立ち回れた実感が、長い目で見て自分を育てているかどうか、立ち止まって考える材料になる言葉です。
この章句が説くこと
収斂機心修養慎み習慣
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