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言志四録 / 言志後録 第十条 言語は利剣のごとし

天地間靈玅。莫如人言語者。如禽獸徒有聲音。僅通意嚮耳。唯人則有言語。分明宣達情意。又抒以爲文辭。則可以傳之遠方。詔於後世。一何靈也。惟若是之靈。故其構禍階。造釁端。亦在言語。譬猶利劒之善護身者。輙復自傷。可不愼乎。

新字:天地間霊玅。莫如人言語者。如禽獣徒有声音。僅通意嚮耳。唯人則有言語。分明宣達情意。又抒以為文辞。則可以伝之遠方。詔於後世。一何霊也。惟若是之霊。故其構禍階。造釁端。亦在言語。譬猶利劒之善護身者。輙復自傷。可不慎乎。

書き下し

天地間の霊妙、人の言語に如く者莫し。禽獣の如きは徒に声音有りて、僅かに意嚮を通ずるのみ。唯だ人は則ち言語有りて、分明に情意を宣達す。又抒べて以て文辞と為せば、則ち以て之を遠方に伝へ、後世に詔ぐべし。一に何ぞ霊なるや。惟だ是くの若く之れ霊なり、故に其の禍階を構へ、釁端を造るも、亦言語に在り。譬へば猶ほ利剣の善く身を護る者の、輒ち復た自ら傷つくるがごとし。慎まざるべけんや。

現代語訳

天地の間の霊妙なもので、人の言葉に及ぶものはない。鳥や獣などは、ただ声があって、わずかに意向を通じ合うだけである。ただ人だけが言葉を持ち、はっきりと感情や意思を伝えることができる。さらにそれを述べて文章にすれば、遠い地方にまで伝え、後の世にまで告げ知らせることができる。なんと霊妙なことであろうか。しかし、これほどまでに霊妙であるからこそ、災いのきっかけを作り、争いの発端をこしらえるのも、また言葉にある。たとえば鋭い剣が身をよく守るものでありながら、ともすればかえって自分を傷つけてしまうようなものである。慎まないでよいだろうか。

解説

言葉の力をまず讃え、その力ゆえの危うさを戒める、組み立ての明快な条です。動物の声は意向を伝えるだけだが、人の言葉は感情と意思をはっきり伝え、文字にすれば遠くへも後の世へも届く。これほど霊妙なものだから、禍いの階段を作り争いの糸口を生むのも言葉だ、と一斎は言います。身を守る鋭い剣が、扱いを誤れば持ち主を傷つけるという喩えは、言葉の両刃の性質をよく捉えています。前の条で自重の対象に言語を挙げたことともつながります。書いた文章が遠くまで、長く残るという指摘は、メールやSNSの時代にいっそう切実です。発した言葉がどこまで届き、どう残るかを考えて使っているかを問う一条です。

この章句が説くこと

言語慎言禍福文章コミュニケーション

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