言志四録 / 言志録 第二百三十二条 父母の遺物を愛護す
父母遺衣服器玩。爲子孫者當愛護之。以無忘追慕。决無脫手贈人之理。今喪家分贈遺物。漢土亦輓近有孝布孝帛。並弊俗也。金世宗却宋遺物。亦有見。
新字:父母遺衣服器玩。為子孫者当愛護之。以無忘追慕。決無脱手贈人之理。今喪家分贈遺物。漢土亦輓近有孝布孝帛。並弊俗也。金世宗却宋遺物。亦有見。
書き下し
父母の遺せる衣服器玩は、子孫たる者当に之を愛護し、以て追慕を忘るること無かるべし。決して手を脱して人に贈るの理無し。今喪家は遺物を分贈す。漢土も亦輓近孝布孝帛有り。並びに弊俗なり。金の世宗の宋の遺物を却くるも、亦見有り。
現代語訳
父母が遺した衣服や身の回りの道具は、子孫たる者は大切に守り、それによって亡き親を慕う心を忘れないようにすべきである。決して手放して人に贈ってよい道理はない。今、喪中の家では遺品を分けて人に贈っている。中国でも近ごろは孝布・孝帛(喪家が配る布や絹)というものがある。どちらも悪い習わしである。金の世宗が宋から贈られた遺物を受け取らなかったのも、やはり見識のあることである。
解説
形見分けの風習を、一斎ははっきり「弊俗」と退けています。親の遺した衣服や道具は、それに触れるたびに親を思い出させるもので、子孫が手元で大切にしてこそ追慕の心が続くという考えです。中国の孝布・孝帛という配り物も同じ類とし、金の世宗が宋から届いた遺物を退けた故事を、けじめを知る例として挙げています。前の条の「厚」の字を、喪の具体的な作法に落とし込んだものと読めます。今の感覚では形見分けにも故人をしのぶ意味がありますが、物を通して誰かを思い続けることの重みを考えさせる一条です。受け継いだものをどう扱うかは、組織の伝統や創業者の遺したものにも通じる問いでしょう。
この章句が説くこと
孝追慕遺物喪礼習俗
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