言志四録 / 言志録 第二百十三条 大人の心は万物一体
體膚垢汚。化爲蟣蝨。不得不刷除。又思念此物亦爲吾皮毛之末所生。猶不忍殺。大人之心。以天地萬物爲一體。其恤刑愼罰。卽是與此念頭一般。
新字:体膚垢汚。化為蟣蝨。不得不刷除。又思念此物亦為吾皮毛之末所生。猶不忍殺。大人之心。以天地万物為一体。其恤刑慎罰。即是与此念頭一般。
書き下し
体膚垢汚すれば、化して蟣蝨と為る。刷除せざるを得ず。又思念すらく、此の物も亦吾が皮毛の末の生ずる所と為せば、猶ほ殺すに忍びず。大人の心は、天地万物を以て一体と為す。其の刑を恤れみ罰を慎むは、即ち是れ此の念頭と一般なり。
現代語訳
体や皮膚に垢がたまると、それがシラミやその卵に変わる。取り除かないわけにはいかない。しかしまた思う、これも自分の皮膚や毛の末から生まれたものだと思えば、やはり殺すに忍びない。大人(徳の高い人)の心は、天地万物を一体とする。刑罰を行うにあたって憐れみ慎重であるのは、ちょうどこの思いと同じである。
解説
垢から湧くシラミという卑近な例から、為政者の心構えへと一気に話を広げた一条です。シラミは取り除かねばならない。けれども自分の体から生じたものと思えば、殺すに忍びない気持ちも起こる。この二つの心の同居こそが、刑罰を扱う者の心だと一斎は言います。「大人は天地万物を以て一体と為す」は王陽明『大学問』の言葉で、前の条で説かれた万物一体の思想がここで政治に結びつきます。『書経』の「刑を恤れむ」も踏まえています。罰は避けられないが、罰する相手も自分と地続きの存在だと思えば、軽々しくは科せない。人を処分したり評価を下したりする立場にある人に、その心の置き方を考えさせる言葉です。
この章句が説くこと
万物一体仁刑罰為政慎罰
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