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言志四録 / 言志録 第二百条 名有るの父の子

有名之父。其子不墜家聲者鮮矣。或謂世人推尊其父。因及其子。爲子者長於豢養。且有所挾。遂養成傲惰之性。故多不肖。固非無此理。而不獨此。父既非常人。寧不慮及豫爲之防。畢竟不能反之。葢亦有數矣。試思之就如草木。今年結實過多。則明年必歉。人家乘除之數亦有然者。

新字:有名之父。其子不墜家声者鮮矣。或謂世人推尊其父。因及其子。為子者長於豢養。且有所挟。遂養成傲惰之性。故多不肖。固非無此理。而不独此。父既非常人。寧不慮及予為之防。畢竟不能反之。葢亦有数矣。試思之就如草木。今年結実過多。則明年必歉。人家乗除之数亦有然者。

書き下し

名有るの父、其の子家声を墜さざる者は鮮し。或ひと謂ふ、「世人其の父を推尊し、因りて其の子に及ぶ。子為る者は豢養に長じ、且つ挾む所有り、遂に傲惰の性を養成す。故に不肖多し」と。固より此の理無きに非ず。而れども独り此のみならず。父既に常人に非ず、寧ぞ慮り及びて予め之が防ぎを為さざらんや。畢竟之を反すこと能はざるは、蓋し亦数有らん。試みに之を思へ、就ち草木の如き、今年実を結ぶこと過多なれば、則ち明年必ず歉し。人家乗除の数も亦然る者有り。

現代語訳

名を知られた父を持つ子で、家の名声を落とさない者は少ない。ある人は言う。「世の人がその父を尊ぶので、それがその子にまで及ぶ。子のほうは甘やかされて育ち、しかも親の威光を笠に着るところがあるので、ついに傲慢で怠惰な性格ができあがる。だから不肖の子が多いのだ」と。もちろんこの理屈がないわけではない。しかしそれだけではない。父はもともと普通の人ではないのだから、どうしてそこに考えが及ばず、あらかじめ防ぐ手を打たないことがあろうか。それでも結局これを覆すことができないのは、やはり巡り合わせ(数)というものがあるのであろう。試みに考えてみるがよい。草木で言えば、今年実がなりすぎれば、翌年は必ず不作になる。人の家の盛衰の差し引き(乗除)にも、これと同じようなところがある。

解説

名高い父の子が家名を落としやすいのはなぜか。一斎はまず、世間にちやほやされ、親の威光を笠に着て傲慢になるという通説を認めます。しかしそれだけでは説明がつかない。優れた父なら当然それを見越して手を打つはずなのに、なお防げないのは、そこに「数」、つまり巡り合わせがあるからだと言います。草木が実をつけすぎた翌年は不作になるという比喩は、家の盛衰にも満ち欠けの差し引きがあるという見方です。『言志録』巻頭の条と同じく、一斎には人の力を超えた数への意識がありました。二代目や後継者の問題を、個人の資質だけでなく、盛りの後に来る反動という長い時間軸で考えてみる手がかりになります。

この章句が説くこと

家の盛衰数後継者驕り盛者必衰

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