言志四録 / 言志録 第百八十九条 禍は口より出で病は口より入る
人最當愼口。口之職兼二用。出言語。納飮食。是也。不愼於言語。足以速禍。不愼於飮食。足以致病。諺云。禍自口出。病自口入。
新字:人最当慎口。口之職兼二用。出言語。納飲食。是也。不慎於言語。足以速禍。不慎於飲食。足以致病。諺云。禍自口出。病自口入。
書き下し
人は最も当に口を慎むべし。口の職は二用を兼ぬ。言語を出だし、飲食を納るる、是れなり。言語を慎まざれば、以て禍を速くに足る。飲食を慎まざれば、以て病を致すに足る。諺に云ふ、「禍は口より出で、病は口より入る」と。
現代語訳
人は何よりも口を慎まなければならない。口の働きは二つの用を兼ねている。言葉を出すことと、飲み食いしたものを取り入れることがそれである。言葉を慎まなければ禍いを招き寄せることになり、飲食を慎まなければ病気を引き起こすことになる。ことわざに「禍いは口から出て、病は口から入る」と言う。
解説
口には言葉を出す働きと飲食を入れる働きの二つがあり、どちらも慎みを欠けば害を招く、という明快な一条です。結びの諺は古く晋の傅玄の言葉として伝わるもので、一斎はこれを引いて出入りの両面から口の慎みを説きました。『易』の頤の卦の象伝にも「言語を慎み、飲食を節す」とあり、言葉と飲食を並べて戒めるのは儒学の伝統的な考え方です。前の数条が言葉と心の関係を論じていたのに対し、ここでは身体の養生にまで話を広げています。長寿を保った一斎らしい着眼ともいえます。発言の不用意さと不摂生とが、実は同じ緩みから来ていないか、見直すきっかけになる言葉です。
この章句が説くこと
慎言節制養生禍福
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