言志四録 / 言志録 第百六十五条 飲食男女は人を生かし人を戕ふ
民非水火不生活。而水火又能焚溺物。飮食男女。人之所以生息。而飮食男女。又能戕害人。
新字:民非水火不生活。而水火又能焚溺物。飲食男女。人之所以生息。而飲食男女。又能戕害人。
書き下し
民は水火に非ざれば生活せず。而るに水火は又能く物を焚溺す。飲食男女は、人の生息する所以なり。而るに飲食男女は、又能く人を戕害す。
現代語訳
人々は水と火がなければ生きていけない。しかし水と火はまた、物を焼き、溺れさせることもできる。飲食と男女の交わりは、人が生きて子孫を増やしていくためのものである。しかし飲食と男女の交わりは、また人を損ない害することもある。
解説
孟子尽心上の「民は水火に非ざれば生活せず」と、礼記礼運篇の「飲食男女は人の大欲存す」を重ね合わせた一条です。水と火は生活に欠かせないが、使い方を誤れば焼き尽くし溺れさせる。同じように飲食と男女の欲も、人が生き、命をつないでいく根本でありながら、度を越せば人を損なう。前の二条で説いた欲望の節度を、一般的な原理としてまとめています。欲を悪として否定するのではなく、生の根源であるからこそ扱いが難しいという見方です。人を生かすものが同時に人を損なうという構図は、報酬や権限、競争など、組織を動かす力についても当てはまるのではないでしょうか。
この章句が説くこと
欲望節度養生両面性
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