言志四録 / 言志録 第百五条 天下に無用の物無し
天下事物。有理勢不得不然者。學人或輙斥人事。目以無用。殊不知天下無無用之物。則亦無無用之事。其斥以爲無用者。安知其不爲大有用者乎。若輙一概以無用目之。則天之生萬物。一何無用之多也。有不中材之草木。有不可食之禽獸蟲魚。天果有何用而生之。殆非情量所及。易曰。賁其須。須亦將何用。
新字:天下事物。有理勢不得不然者。学人或輙斥人事。目以無用。殊不知天下無無用之物。則亦無無用之事。其斥以為無用者。安知其不為大有用者乎。若輙一概以無用目之。則天之生万物。一何無用之多也。有不中材之草木。有不可食之禽獣虫魚。天果有何用而生之。殆非情量所及。易曰。賁其須。須亦将何用。
書き下し
天下の事物には、理勢の然らざるを得ざる者有り。学人或は輒ち人事を斥けて、目するに無用を以てす。殊に知らず、天下に無用の物無ければ、則ち亦無用の事無きを。其の斥けて以て無用と為す者、安んぞ其の大いに用有る者と為らざるを知らんや。若し輒ち一概に無用を以て之を目せば、則ち天の万物を生ずる、一に何ぞ無用の多きや。材に中らざるの草木有り、食ふべからざるの禽獣虫魚有り。天果して何の用有りて之を生ずる。殆ど情量の及ぶ所に非ず。易に曰く、「其の須を賁る」と。須も亦将た何の用ぞ。
現代語訳
天下の事物には、道理と成り行きからしてそうならざるをえないものがある。学問をする人の中には、ともすると世間の人事を退けて無用のものと見なす者がいる。しかし、天下に無用の物がない以上、無用の事もまたないということを、まったくわかっていない。彼らが退けて無用だとするものが、実は大いに役立つものでないと、どうしてわかろうか。もし何でも一概に無用と見なすなら、天が万物を生み出したことにも、なんと無用なものが多いことになろう。材木にならない草木があり、食べられない鳥獣や虫魚がある。天はいったい何の役に立てようとしてそれらを生んだのか。それはほとんど人の思慮の及ぶところではない。『易』に「其の須(ひげ)を賁る(飾る)」とある。ひげもまた、いったい何の役に立つというのか。
解説
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