言志四録 / 言志録 第八十四条 下情と下事
下情與下事不同。君人者。下情不可不通。下事則不必通。
新字:下情与下事不同。君人者。下情不可不通。下事則不必通。
書き下し
下情と下事とは同じからず。人に君たる者は、下情には通ぜざるべからず。下事には則ち必ずしも通ぜず。
現代語訳
下々の人々の心情と、下々の細かな仕事とは同じではない。人の上に立つ者は、下の者の心情には通じていなければならない。しかし下の者が扱う細かな仕事にまで必ずしも通じている必要はない。
解説
「下情」と「下事」を分けた、指導者論として鋭い一条です。下情とは、民や部下がいま何を感じ、何に困っているかという実情。下事とは、現場の一つひとつの作業や手続きです。上に立つ者が下事にまで口を出せば、部下の持ち場を奪い、自らは大局を見失います。しかし下情に疎ければ、政は人の心から離れていきます。一斎は、知るべきものと任せるべきものの線引きを求めているのです。細部を把握していることを有能さと取り違えやすいリーダーにとって、自分は部下の仕事を知っているのか、それとも部下の心を知っているのかを問い直す手がかりになります。
この章句が説くこと
為政下情委任リーダーシップ人心
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孟子・離婁章句上孟子曰く、「桀紂の天下を失ふや、其の民を失へばなり。其の民を失ふ者は、其の心を失へばなり。天下を得るに道有り、其の民を得れば斯に天下を得。其の民を得るに道有り、其の心を得れば斯に民を得。其の心を得るに道有り、欲する所は、之を与へて之を聚め、悪む所は、施すこと勿きのみ。民の仁に帰するや、猶ほ水の下きに就き、獣の壙(ひろの)に走るがごときなり。故に淵の為に魚を駆る者は、獺なり。叢の為に爵を駆る者は、鸇なり。湯・武の為に民を駆る者は、桀と紂となり。今天下の君に仁を好む者有らば、則ち諸侯皆之が為に駆らん。王たること無からんと欲すと雖も、得べからざるのみ。今の王たらんと欲する者は、猶ほ七年の病に三年の艾を求むるがごときなり。苟くも畜へずと為さば、終身得ず。苟くも仁に志さざれば、終身憂辱して、以て死亡に陥らん。詩に云ふ、『其れ何ぞ能く淑からん、載ち胥及に溺る。』と、此の謂なり。」
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『春秋左氏伝』哀公十六年 葉公、冑を免ぐ遂に之を殺して、王を以て高府に如く。石乞、門に尹たり。圉公陽、宮に穴し、王を負ひて以て昭夫人の宮に如く。葉公も亦た至る。北門に及ぶ。或ひと之に遇ひて曰く、「君胡ぞ冑せざる。國人の君を望むこと、慈父母を望むが如し。盜賊の矢、若し君を傷つけば、是れ民の望を絕つなり。之を若何ぞ冑せざる」と。乃ち冑して進む。又一人に遇ふ。曰く、「君胡ぞ冑する。國人の君を望むこと、歲を望むが如し。日日以て幾ふ。若し君の面を見ば、是れ艾を得るなり。民、死せざるを知らば、其れ亦た夫の奮心有らん。猶ほ將に君を旌して以て國に徇へんとす。而るを反つて面を掩ひて以て民の望を絕つ。亦た甚だしからずや」と。乃ち冑を免ぎて進む。箴尹固の、其の屬を帥ゐて將に白公に與せんとするに遇ふ。子高曰く、「二子微かりせば、楚は國ならず。德を棄てて賊に從ふ、其れ保つ可けんや」と。乃ち葉公に從ふ。國人と與に以て白公を攻めしむ。白公、山に奔りて縊る。其の徒、之を微す。石乞を生拘して、白公の死を問ふ。對へて曰く、「余、其の死所を知る。
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史記 高祖本紀且つ吾の軍を霸上に還す所以は、諸侯の至るを待ちて約束を定めんのみ。」と。乃ち人をして秦の吏と県郷邑を行かしめ、之に告諭す。秦人大いに喜び、争ひて牛羊酒食を持ちて軍士に献饗す。沛公又譲りて受けず、曰く、「倉粟多し、乏しきに非ず、人に費さしむるを欲せず。」と。人又益々喜び、唯だ沛公の秦王と為らざらんことを恐る。
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『呻吟語』内篇・應務・一の拙法有り世人の相與するは、面上に非ざれば則ち口中なり。人の心は固より面と口とに掩ふ能はず。而して測る可からざる者は則ち面と口とに盡きざるなり。故に惟だ人心のみ最も畏る可く、人心最も知る可からず。此れ天下の陷阱にして、古今生死の衢なり。余に一の拙法有り。之を推すに至誠を以てし、之を施すに至厚を以てし、之を持するに至慎を以てし、是非を遠ざけ、利名を讓り、後下に處せば、則ち夷狄鳥獸も骨肉腹心とす可し。將に深き者をして且つ心を傾けしめ、險なる者をして且つ德に化せしめんとす。而して何ぞ陷阱の予に及ばんや。
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