言志四録 / 言志録 第八十三条 庸主の聴くところ
不信大臣之言而信左右之言。不聽男子之言而聽婦人之言。庸主皆然。
新字:不信大臣之言而信左右之言。不聴男子之言而聴婦人之言。庸主皆然。
書き下し
大臣の言を信ぜずして左右の言を信じ、男子の言を聴かずして婦人の言を聴く。庸主は皆然り。
現代語訳
大臣の言葉を信じないで、身近に仕える側近の言葉を信じる。表で仕える男子の家臣の言葉を聞かないで、奥向きの婦人の言葉を聞く。凡庸な君主はみなこのようである。
解説
凡庸な君主の見分け方を短く言い切った一条です。大臣は政務の責任を負い、公の場で意見を述べる立場にあります。これに対して左右の近臣や奥向きの人々は、君主の耳に心地よいことを私的にささやくことができます。婦人を持ち出すのは江戸時代の言い方で、今そのまま受け取る必要はありませんが、要は、正式な責任の筋を通った意見よりも、身近で気安い者の声を重んじてしまう弱さを指しています。昌平坂学問所の儒官として大名にも接した一斎の実感でしょう。組織の長が、耳に入りやすい声と、責任を負って述べられた声とを取り違えていないか、振り返る材料になります。
この章句が説くこと
為政君主聴言側近政治人を見る目
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