言志四録 / 言志録 第七十九条 聡明にして重厚
聰明而重厚。威嚴而謙冲。爲人上者當如此。
新字:聰明而重厚。威厳而謙沖。為人上者当如此。
書き下し
聡明にして重厚、威厳にして謙沖。人の上たる者は当に此くの如くなるべし。
現代語訳
聡明でありながら重厚で、威厳がありながら謙虚でへりくだっている。人の上に立つ者は、このようであるべきだ。
解説
人の上に立つ者の資質を、二組の対になる言葉で示した一条です。聡明さは頭の切れで、そればかりが目立つと軽く見え、人は安心してついていけません。そこで重厚さ、どっしりとした落ち着きが必要になります。威厳は人を従わせる力ですが、それだけでは人は萎縮し、近寄れなくなります。そこで謙沖、へりくだって心を空しくする姿勢が求められます。一見反対の性質を一人の中に兼ね備えることが、上に立つ者の条件だというのです。先の条で才を剣にたとえ、才ある紂王の危うさを語ったことと考え合わせると、才気に重みと謙虚さが加わってはじめて人を治められる、という一斎の考えが見えてきます。自分はどちらに偏りがちか、振り返る手がかりになる言葉です。
この章句が説くこと
リーダーシップ重厚謙虚威厳人の上に立つ
関連する章句
-
言志四録・言志晩録 第百九十九条 礼譲を以て甲冑と為す甲冑には則ち辱むべからざるの色有り。人、礼譲を服して以て甲冑と為さば、誰か敢て之を辱めん。
-
易経・大有卦周易 第十四卦。乾下離上。易経。大有は、元いに亨る。初九、害に交わる无し、咎に匪ず。艱しめば則ち咎无し。九二、大車以て載す、往く攸有り、咎无し。九三、公用て天子に亨せらる、小人は克わず。九四、其の彭なるに匪ず、咎无し。六五、厥の孚交如たり、威如たり、吉。上九、天より之を佑く、吉にして利ろしからざる无し。彖に曰く、
-
論語・公冶長篇子貢問いて曰く、「孔文子、何を以て之を文と謂うや。」子曰く、「敏にして学を好み、下問を恥じず。是を以て之を文と謂うなり。」
-
言志四録・言志晩録 第七十一条 志は人の上、身は人の後志は人の上に出づるも、倨傲の想に非ず。身は人の後に甘んずるも、萎薾の陋に非ず。
-
牧民忠告・御下小にしては一邑(いちゆう)と為り、大にしては天下と為るも、賞罰明らかなれば、則ち声色を煩わさずして威令自(おのずか)ら行わる。人徒(ただ)民を治むるの難きを知りて、吏を治むるの尤(もっと)も難きを知らず。蓋し吏は官と比(ひ)し、詭詐(きさ)生じ易し。民は官に遠く、理法を知る能わず、誤(あやま)って然(しか)して犯す、宜(むべ)なるかな矜(あわれ)む可きがごとし。吏は則ち日(ひび)法律の中に処り、知らざるに非ざるなり、小過懲(こ)らさざれば、必ず大患を為し、忌憚(きたん)する所無からん。嘗て聞く、「民を治むるは目を治むるが如し、撥触(はっしょく)すれば則ち益々昏(くら)し。吏を治むるは歯牙(しが)を治むるが如し、剔漱(てきそう)すれば則ち益々利(と)し」と。《伝》に曰わく、「威其の愛に克てば允(まこと)に済(な)る、愛其の威に克てば允に罔(あやま)る」と。功(こう)此れに法(のっと)りて行わば、断じて治め難きに至らじ。
-
『十善法語』巻第八・不貪欲戒此位アリテ居ル。下ヲ侮レバ害ノ生スルコトヲ知ル。乱世ニハ功労ノ臣ト坐起ヲ共ニシテ其忠義ヲ励マス。治世ニハ。有徳ヲ尊重シテ風化ヲ淳厚ニスルト云コトシヤ。沙門法ノ中ハ。諸ノ賢聖徳ヲ隠シテ凡夫ニ如同スル。此儀シヤ。此富アリテ有ツ。妄ニ用フレハ徳ヲ敗ルコトヲ知ル。財利民ノ為ニツム。器械国ノ為ニ設ク。城邑橋梁。神社仏閣。ソノ教ニ随テ国界ヲ荘厳スルト云コトシヤ。沙門法ノ中ハ。資財ミナ三宝ニ帰シテ自ラ畜積セヌ。此儀シヤ。此威力アリテ他ヲ伏スル。驕レハ禍蕭牆ノ中ニ起ル。顔色常ニ和ス。威厳此中ニアリテ尽ルコトナイ。音声常ニ和ス。威厳此中ニ在テ尽ルコトナイ。挙動常ニ謙下ス。威厳此中ニ在テ尽ルコトナイ。万国ヲ制伏スルニ。十分ノ威権ヲ用ヒヌ。此中威海外ヲ靡ケ。徳鰥寡ニ及フト云コトシヤ。沙門法ノ中ハ。遺教経ニ執持応器以乞自活。自見如是トアル。此儀シヤ。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る