言志四録 / 言志録 第七十六条 武技は心身を発揚す
人君當令士人常遊於射騎刀矟之技。盖其進退驅逐。坐作擊刺。使人心身大有所發揚。是不但治不忘亂。而又於政理有補。
新字:人君当令士人常遊於射騎刀矟之技。盖其進退駆逐。坐作撃刺。使人心身大有所発揚。是不但治不忘乱。而又於政理有補。
書き下し
人君は当に士人をして常に射騎刀矟の技に遊ばしむべし。蓋し其の進退駆逐、坐作撃刺、人の心身をして大いに発揚する所有らしむ。是れ但だ治に乱を忘れざるのみならず、而して又政理に於て補ひ有り。
現代語訳
君主は武士たちに、常に弓術・馬術・刀術・槍術の技に親しませるべきである。思うに、進んだり退いたり、駆けたり追ったり、座ったり立ったり、打ったり突いたりすることで、人の心身は大いに発散されるのである。これは、太平の世にあって乱を忘れないというだけでなく、政治の筋道の上でも役に立つのである。
解説
歓楽や音楽による発散を論じた前の条に続き、武士にとっての発散の場として武芸を挙げた一条です。弓・馬・刀・槍の稽古は、進退・駆逐・坐作・撃刺と体を大きく使うので、心身にたまったものを存分に発揚させます。易の「治に居て乱を忘れず」という備えの意味はもちろんですが、一斎が強調するのは、それが政治の上でも役立つという点です。長い太平で武士が役目を失い、鬱屈した気がよからぬ方向に向かうことを、一斎は見ていたのでしょう。遊ばせるという言葉づかいにも、義務としての鍛錬より、打ち込める場を与えるという意図がうかがえます。体を動かす場や打ち込める活動が、働く人の心の健やかさや組織の安定にどうつながるかを考えさせます。
この章句が説くこと
武芸発散心身治に居て乱を忘れず為政
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