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言志四録 / 言志録 第七十三条 方相氏の儺の深意

古者方相氏爲儺。蒙熊皮。黃金四目。玄衣朱裳。執戈揚盾。帥百隷而毆之。鄉人群然出觀。盖制禮者有深意焉。伏陰愆陽。結爲疫氣。欲驅除之。莫若資乎人純陽之氣也。方相作氣率先。百隷從之。狀若恠物然。闔鄉老少。雜遝聚觀。且駭且咲。於是。陽氣四發。疫氣自能消散。乃至闔鄉人心。亦因以懽然和暢。無復邪慝之伏鬱於內矣。盖其近於戲處。是其妙用所在歟。

新字:古者方相氏為儺。蒙熊皮。黄金四目。玄衣朱裳。執戈揚盾。帥百隷而殴之。郷人群然出観。盖制礼者有深意焉。伏陰愆陽。結為疫気。欲駆除之。莫若資乎人純陽之気也。方相作気率先。百隷従之。状若恠物然。闔郷老少。雑遝聚観。且駭且咲。於是。陽気四発。疫気自能消散。乃至闔郷人心。亦因以懽然和暢。無復邪慝之伏鬱於内矣。盖其近於戯処。是其妙用所在歟。

書き下し

古者、方相氏の儺を為すや、熊皮を蒙り、黄金の四目、玄衣朱裳、戈を執り盾を揚げ、百隷を帥ゐて之を駆る。郷人群然として出でて観る。蓋し礼を制する者、深意有り。伏陰愆陽、結びて疫気と為る。之を駆除せんと欲せば、人の純陽の気に資るに若くは莫きなり。方相気を作して率先し、百隷之に従ひ、状は怪物の若く然り。闔郷の老少、雑遝して聚まり観、且つ駭き且つ笑ふ。是に於て、陽気四発し、疫気自ら能く消散す。乃ち闔郷の人心に至るまで、亦因りて以て懽然として和暢し、復た邪慝の内に伏鬱すること無し。蓋し其の戯に近き処、是れ其の妙用の在る所か。

現代語訳

昔、方相氏(周代の悪鬼払いの官)が儺(鬼やらい)を行うときは、熊の皮をかぶり、黄金の四つ目の面をつけ、黒い上衣に朱の裳を着け、戈を持ち盾を振り上げ、多くの下役を率いて疫鬼を追い払った。村の人々は群がって見物に出た。思うに、礼を定めた者には深い意図があったのである。陰の気がこもり陽の気が乱れると、それが凝り固まって疫病の気となる。これを追い払おうとするなら、人の純粋な陽の気に頼るのが一番である。方相氏が気を奮い起こして先頭に立ち、下役たちがそれに従う。そのさまはまるで化け物のようである。村じゅうの老人も若者も、ごった返して集まって見物し、驚いたり笑ったりする。こうして陽の気が四方に発散し、疫病の気はおのずから消え去る。さらに村じゅうの人の心までも、それによってにこやかに和らぎのびやかになり、よこしまな気持ちが内に鬱屈することもなくなる。思うに、そのたわむれに近いところこそ、その妙なる働きのあるところなのであろう。

解説

周礼に記される方相氏の儺は、日本の節分の鬼やらい(追儺)の源流となった行事です。一斎はその異様な扮装と騒々しさに、礼を定めた古人の「深意」を読み取ります。こもった陰気が疫病の気になるなら、それを払うのは人の陽気だ。怪物のような姿で練り歩く方相氏を見て、村人たちは驚き、笑う。その笑いと賑わいが陽気を四方に広げ、疫病の気を消すと同時に、人々の心の鬱屈も晴らすというのです。最後の「戯に近き処、是れ其の妙用」が要で、厳粛な儀礼の中にある遊びの要素こそが効いているという見方です。前条の礼楽合一とも通じます。組織の行事やイベントが、形式だけでなく人の気持ちを晴らす役目を果たしているかを考えさせる一条です。

この章句が説くこと

礼祭祀陽気笑い気晴らし

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