言志四録 / 言志録 第七十四条 禁と不禁との間
治安日久。樂事漸多。勢然也。勢之所趨。即天也。如士女聚懽。飮讌歌舞。在在有之。固不可得而禁止。而乃强禁之。則人氣抑鬱。無所發洩。必伏爲邪慝。藏爲凶姦。或結爲疾疢毒瘡。其害殊甚。爲政者但當斟酌人情。爲之操縱。置之於禁不禁之間。使其不至於過甚。是亦赴時之政爲然。
新字:治安日久。楽事漸多。勢然也。勢之所趨。即天也。如士女聚懽。飲讌歌舞。在在有之。固不可得而禁止。而乃強禁之。則人気抑鬱。無所発洩。必伏為邪慝。蔵為凶姦。或結為疾疢毒瘡。其害殊甚。為政者但当斟酌人情。為之操縦。置之於禁不禁之間。使其不至於過甚。是亦赴時之政為然。
書き下し
治安日久しければ、楽事漸く多きは、勢然るなり。勢の趨く所は、即ち天なり。士女聚まり懽び、飲讌歌舞するが如きは、在在之有り。固より得て禁止すべからず。而るに乃ち強ひて之を禁ずれば、則ち人気抑鬱して、発洩する所無く、必ず伏して邪慝と為り、蔵れて凶姦と為り、或は結びて疾疢毒瘡と為る。其の害殊に甚だし。政を為す者は但だ当に人情を斟酌して、之が操縦を為し、之を禁と不禁との間に置き、其れをして過甚に至らざらしむべし。是れ亦時に赴くの政、然りと為す。
現代語訳
太平の世が長く続けば、楽しみごとが次第に多くなるのは、自然の勢いである。勢いの向かうところは、すなわち天である。男女が集まって楽しみ、酒宴を開いて歌い舞うようなことは、どこにでもある。もとより禁じ止めることなどできない。それなのに無理に禁じれば、人々の気はふさがって発散するところがなく、必ず内にこもってよこしまな心となり、隠れて凶悪な企てとなり、あるいは凝り固まって病気や悪性のできものとなる。その害は非常に大きい。政治を行う者は、ただ人情をくみ取ってこれを加減し、禁じるとも禁じないともつかないところに置いて、行き過ぎないようにさせるべきである。これもまた、時勢に応じた政治として当然そうあるべきことなのである。
解説
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