言志四録 / 言志録 第四十八条 恩の厚薄で報を変えず
天尊地卑。乾坤定矣。君臣之分。已屬天定。各盡其職而已。故臣之於君。當不視畜養之恩何如而厚薄其報也。
新字:天尊地卑。乾坤定矣。君臣之分。已属天定。各尽其職而已。故臣之於君。当不視畜養之恩何如而厚薄其報也。
書き下し
天は尊く地は卑くして、乾坤定まる。君臣の分は、已に天定に属す。各其の職を尽くすのみ。故に臣の君に於ける、当に畜養の恩の何如を視て其の報を厚薄すべからざるなり。
現代語訳
天は尊く地は低く、それによって乾(天)と坤(地)の位置が定まる。君臣の分もまた、すでに天によって定められたものである。それぞれがその職分を尽くすだけである。だから臣下は君主に対して、養ってもらう恩が厚いか薄いかを見て、自分の報い方を厚くしたり薄くしたりしてはならない。
解説
冒頭の「天尊地卑、乾坤定まる」は、易の繋辞上伝の書き出しです。前条では君主の側から、俸禄で人を飼うという発想を戒めました。この条はその裏返しで、臣下の側に向けた言葉です。君臣の分が天に定められたものである以上、臣下は待遇の良し悪しを計って働きぶりを加減してはならない、と一斎は言います。前条と合わせて読むと、君も臣も相手の出方を見て損得で動けば、関係は取引に落ちるという一つの考えが見えてきます。現代の雇用はもちろん身分ではなく契約ですが、待遇に応じて力の出し方を変えるのか、自分の職分として尽くすのか。働く側の姿勢を、自分に問う材料として読めるでしょう。
この章句が説くこと
職分君臣忠天定仕事観
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