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言志四録 / 言志録 第四十四条 得意の時こそ退歩の工夫

得意時候。最當着退步工夫。一時一事。亦皆有亢龍。

新字:得意時候。最当着退歩工夫。一時一事。亦皆有亢竜。

書き下し

得意の時候は、最も当に退歩の工夫を着くべし。一時一事も、亦皆亢竜有り。

現代語訳

物事が思いどおりに運んでいる時こそ、最も一歩退く工夫をすべきである。一つの時期、一つの事柄にも、みな「亢竜(昇りつめた竜)」の悔いがある。

解説

「亢竜」は易の乾卦の上九「亢竜悔い有り」に出る語で、天の極みまで昇りつめた竜は、もうそれ以上進めず、あとは悔いを残すばかりだという意味です。易では、国家や人生の大きな盛衰を語るときに引かれることの多い言葉ですが、一斎はそれを「一時一事」、つまり日々の小さな局面にまで引き下ろします。一つの会議、一つの交渉、一つの企画にも、勢いに乗って押し切りたくなる頂点があり、そこで踏みとどまれるかどうかが後の明暗を分けるというのです。追い風のときほど判断が雑になりやすいのは、今も変わりません。うまくいっている時に、あえて半歩引いて見直す工夫を、自分の仕事のどこに置いているかを考えさせる一条です。

この章句が説くこと

退歩盛衰慎み易引き際

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