言志四録 / 言志録 第四十一条 富貴は春夏、貧賤は秋冬
富貴。譬則春夏也。使人心蕩。貧賤。譬則秋冬也。使人心肅。故人於富貴則溺其志。於貧賤則堅其志。
新字:富貴。譬則春夏也。使人心蕩。貧賤。譬則秋冬也。使人心粛。故人於富貴則溺其志。於貧賤則堅其志。
書き下し
富貴は譬へば則ち春夏なり、人の心をして蕩せしむ。貧賤は譬へば則ち秋冬なり、人の心をして粛せしむ。故に人、富貴に於ては則ち其の志を溺らし、貧賤に於ては則ち其の志を堅くす。
現代語訳
富貴はたとえれば春や夏のようなもので、人の心をゆるませ浮つかせる。貧賤はたとえれば秋や冬のようなもので、人の心を引き締める。だから人は、富貴にあるとその志をおぼれさせ、貧賤にあるとその志を固くする。
解説
境遇が心に与える影響を、四季にたとえた条です。富み栄えているときは春夏のように暖かく、人の心はゆるんで浮つき、志はおぼれてしまう。貧しく低い境遇にあるときは秋冬のように寒く、心は引き締まり、志はかえって堅くなる、と一斎は言います。第十六条で霜雪もまた万物を生かすはたらきだと述べたのと通じ、逆境には人を鍛える意味があるという見方です。孟子の「天の将に大任を是の人に降さんとするや、必ず先づ其の心志を苦しむ」も思い起こされます。事業が順調なときこそ気がゆるんでいないか、苦しいときこそ志を固める好機ではないかを考えさせる一条です。
この章句が説くこと
富貴と貧賤逆境志慢心境遇
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