言志四録 / 言志録 第三十八条 言を察し色を観る
心之所形。尤在於言與色。察言而觀色。賢不肖人不能廋。
新字:心之所形。尤在於言与色。察言而観色。賢不肖人不能廋。
書き下し
心の形はるる所は、尤も言と色とに在り。言を察して色を観れば、賢不肖、人廋す能はず。
現代語訳
心が外に表れるのは、とりわけ言葉と顔色においてである。言葉をよく察し、顔色をよく観れば、その人が賢いか愚かかは、隠しようがない。
解説
ここから人を見る目についての数条が続きます。心は外からは見えませんが、とりわけ言葉と顔色に表れる、と一斎は言います。「廋す」は隠すこと。『論語』為政篇の「其の以す所を視、其の由る所を観、其の安んずる所を察すれば、人焉んぞ廋さんや」、また顔淵篇の「言を察して色を観る」を踏まえています。第二十四条で字に心が表れると述べたのと同じく、見えない心を見えるものから読み取る発想です。採用の面接や部下との面談で、話の中身だけでなく、言葉の選び方や表情の動きにも注意を払っているかを考える手がかりになります。
この章句が説くこと
人を見る目言葉顔色観察人物鑑定
関連する章句
-
人物志・八觀然らば則ち、論顕らかにして正を揚ぐるは、白なり。言応を善くせざるは、玄なり。玄白を経緯するは、通なり。移易して正無きは、雑なり。未然を先識するは、聖なり。玄事を追思するは、叡なり。事を見ること人に過ぐるは、明なり。明を以て晦と為すは、智なり。微忽も必ず識るは、妙なり。美妙にして昧からざるは、疏なり。之を測りて益々深きは、実なり。仮合して炫耀するは、虚なり。
-
『長短経』知人然らば則ち平陂の質は神に在り。〔神は智の主なり。故に神平らかなれば則ち質平らかに、神陂なれば則ち質陂なり。〕明暗の実は精に在り。〔精は実の本なり。精清ければ則ち実明らかに、精濁れば則ち実暗し。〕勇怯の勢は筋に在り。〔筋は勢の用なり。故に筋勁ければ則ち勢勇に、弱ければ則ち勢怯なり。〕強弱の植は骨に在り。〔骨は植の機なり。故に骨麤ければ則ち植強く、骨細ければ則ち植弱し。〕躁静の決は気に在り。〔気は決の地なり。気盛んなれば躁に決し、気冲なれば静に決す。〕惨懌の情は色に在り。〔色は精の候なり。故に色悴るるは情惨むに由り、色懌ぶは情懌ぶに由るなり。〕衰正の形は儀に在り。〔儀は形の表なり。故に儀衰うるは形殆うきに由り、儀正しきは形粛なるに由る。〕態度の動は容に在り。〔容は動の符なり。哀しみ動けば則ち容哀しく、態正しければ則ち容度あるなり。〕緩急の状は言に在り。〔言は心の状なり。心恕なれば則ち言緩く、心偏なれば則ち言急なり。〕若し質素にして平淡、中は睿く外は朗らか、筋勁く植固く、声清く色沢い、儀は崇く容は直ければ、則ち純粋の徳なり」と。
-
『玉勝間』十四の巻 伊勢国かくて松坂は、殊によき里にて、里のひろき事は、山田につぎたれど、富める家おおく、江戸に店と云う物をかまえ置きて、手代と云う物を多くあらせて、商いせさせて、あるじは、国にのみ居てあそびおり。うわべはさしもあらで、うちうちはいたく豊かにおごりてわたる。すべてこの里、町すじゆがみ正しからず、家なみ悪ろく、一つごとに一尺二尺ずつ出入りてひとしからず、いといとしどけなし。家居はさしもいかめしからず。されど内々のすまいはいとよし。水は良き所と悪ろき所と有りてひとしからず。川水すくなく潮もささねば、船通わず。山へは、大方一里あまり、海へは、半里あまり、諸国のたよりよし。ことに京江戸大坂はたよりよし。諸国の人の入り来る国なれば、いずこへもいずこへも便りよし。人の心は善くもあらず、奢りてまこと少なし。人のかたち、男も女もいなかびたる事更に無くよろし。女は里のゆたかににぎわわしきままにすがたよそいよし。すべておさおさ京におとれる事無し。人の物云いは、尾張の国より東の国々はなまり多きを、伊勢は、大かたなまり無し。されど山城大和などとは、何と無く声いやしく、詞もいやしきこと多し。
-
『甲陽軍鑑』品第四十子細は信玄公わかうまします時より、諸侍のことばをよくきゝ、分別あるも、なきも、つよからんも、よはからんも其人の物いふ儀にてつもり被成たるが、今日にいたるまでも、それがしむけんならくへ堕罪仕らん、少もあひちがはず候、さるほどに、よき事をもほめ所を見いだし、聞付穿鑿の取さたをもつて善をば善と定め、悪をば悪とさだめ、道理をつめてほめそしる武士の作法なり、さなくして、かたはし聞て我贔負の者を虚空によきとばかり批判する事女にあひにたる侍、と信玄公の常々御諚これなり、如此有様にせんさくあそばす故、若手に能武士出くるなりと阿部加賀守申て、金丸助六郎·同惣蔵にをしゆる也、
-
『正法眼蔵随聞記』巻一宋土の寺院なんどには都て雑談をせざれば、其やうなること、をも云はざるなり、吾が国も近ごろ建仁寺の僧正存生の時は、一向あからさまにも此の如きの言語出来らず、滅後にも存世の時の弟子等、少々残りとヾまりたりし時は一切に云はざりき、近ごろ此の七八年より以来、今ま出の若き人たち時々談ずるなり、存外の次第なり、聖教の中にも麁强悪業令人覚悟無利言説能障正道とありて、只うち出して云処の言ばすら、無利の言説は障道の因縁なり況やかくの如きの言語は、ことばに引れて即ち心も起りつべし、最も用心すべきなり、故さらにかくなん云はじとせずとも、悪きことゝ知りなば漸々に退治すべきなり、
-
人物志・八觀其の言甚だ懌べども、精色従わざる者は、中に違う有るなり。其の言違う有れども、精色信ずべき者は、辞の敏ならざるなり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る