学則 / 答安澹泊書
如蘐園隨筆者。不佞昔年。消暑漫書。聊以自娛。本非以公諸大方君子。誤墜剞劂。遂背本心。且其時。舊習未祛。見識未定。客氣未消。自今觀之。懊悔殊甚。忽承奬借。不啻泚顙。葢不佞少小時。已覺宋儒之說於六經有不合者。然已業儒。非此則無以施時。故任口任意。左支右吾。中宵自省。心甚不安焉。隨筆所云。乃其左支右吾之言。何足論哉。何足論哉。
新字:如蘐園随筆者。不佞昔年。消暑漫書。聊以自娯。本非以公諸大方君子。誤墜剞劂。遂背本心。且其時。旧習未祛。見識未定。客気未消。自今観之。懊悔殊甚。忽承奨借。不啻泚顙。葢不佞少小時。已覚宋儒之説於六経有不合者。然已業儒。非此則無以施時。故任口任意。左支右吾。中宵自省。心甚不安焉。随筆所云。乃其左支右吾之言。何足論哉。何足論哉。
書き下し
蘐園随筆の如き者は、不佞昔年、暑を消して漫りに書し、聊か以て自ら娯しむ。本と以て諸を大方の君子に公にするに非ず。誤りて剞劂に墜ち、遂に本心に背く。且つ其の時、旧習未だ祛らず、見識未だ定まらず、客気未だ消えず。今より之を観れば、懊悔殊に甚だし。忽ち奨借を承け、啻に顙に泚するのみならず。蓋し不佞少小の時、已に宋儒の説の六経に於て合はざる者有るを覚ゆ。然れども已に儒を業とす、此に非ざれば則ち以て時に施す無し。故に口に任せ意に任せ、左支右吾す。中宵自ら省み、心甚だ安からず。随筆に云ふ所は、乃ち其の左支右吾の言なり。何ぞ論ずるに足らんや、何ぞ論ずるに足らんや。
現代語訳
『蘐園随筆』のようなものは、私が昔、夏の暑さしのぎに気ままに書きつけ、いささか自分で楽しんだだけのものです。もともと世の立派な君子方に公表するつもりではありませんでした。それが誤って版木に彫られて刊行され、本心に背く結果となりました。しかもその頃は古い習いがまだ抜けず、見識も定まらず、血気も消えていませんでした。今から見れば、後悔はことのほか深いものがあります。それを急にお褒めいただき、額に冷や汗をかくどころではありません。実は私は若い頃から、宋儒の説が六経と合わないところがあることに気づいていました。しかしすでに儒者を生業としており、宋儒の説によらなければ世に通用しませんでした。そこで口に任せ思いに任せて、あちらを支えこちらを繕うような言い繕いをしていました。夜中に自ら省みては、心がひどく落ち着きませんでした。『随筆』に書いたことは、その場しのぎの言い繕いの言葉なのです。論じるに値しません、論じるに値しません。
解説
この章句が説くこと
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『大和俗訓』巻之二・為学下一朝は師にまなび、昼は朝まなびたる事をつとめ習ひ、夕はこれをいよいよ重ね、夜は一日の間のあやまりを考へて、過なければ夜をやすくいぬべし。もし過あらば、悔いはぢて、来日の戒とすべし。是国語にいへる所、学問の法とすべし。
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『和俗童子訓』巻之二・総論下一少年にて、師にあひて物をならふに、朝は師に学び、昼は朝学びたる事を勤め、夕べはいよいよかさね習ひ、夜ふして、一日の中に口に言ひ、身に行ひたる事を顧みて、あやまちあらば、悔いて、後のいましめとすべし。
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『翁問答』改訂翁問答(丁亥春)若しまた世間の学者人ごとに凡情の習態をあらひすて、学問第一義の明徳を明かにして、孝悌忠信のまことあらば親は子の学問せざるをなげき君は臣下の学術なきをきらひ、学問をそしる口なきのみならず、士は云に及ばず、農人商人に至るまで、学問なくてはかなはぬ事なりともてはやすべし、さあらば世俗の学問をそしるにあらず、学者のそしるなり、学者のまねく所なり、しかるを我も人も学問するものゝくせにて、世俗の学問をそしるを聞ては、或は腹を立、或は笑ひおとしめて、そのあやまりの己より出る事をわきまへず、是をもつて見れば、学問の実義に志なき学者は、世俗の学問をそしるよりも、一きはまさりたる聖門のつみ人なるべし。
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『和俗童子訓』巻之二・総論下一幼き時より、善を好んで行ひ、悪を嫌ひて去る、此志専一なるべし。此志なければ、学問しても益をなさず。小児の輩第一にここに志あるべし。此事、前にもすでに言ひつれども、幼年の人々のために、又返す返す丁寧に告ぐるなり。人の善を見ては、我も行はんと思ひ、人の不善を見ては、我が身を顧みて、其ごとくなる不善あらば改むべし。此の如くすれば、人の善悪を見て、皆我が益となる。もし人の善を見ても、我が身に取りて用ひず、人の不善を見ても、我が身を顧みざるは、志なしと云ふべし。愚なるの至なり。
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『酔古堂剣掃』集法・過ちを改むるに如くは無し才智英敏なる者は、宜しく學問を以て其の躁を攝むべし。氣節激昂なる者は、當に德性を以て其の偏を融かすべし。 何を以てか下達する、惟だ非を飾る有り。何を以てか上達する、過ちを改むるに如くは無し。
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