大和俗訓 / 巻之二・為学下
一朝は師にまなび、晝は朝まなびたる事をつとめ習ひ、夕はこれをいよいよ重ね、夜は一日の間のあやまりを考へて、過なければ夜をやすくいぬべし。もし過あらば、悔いはぢて、來日の戒とすべし。是國語にいへる所、學問の法とすべし。
新字:一朝は師にまなび、昼は朝まなびたる事をつとめ習ひ、夕はこれをいよいよ重ね、夜は一日の間のあやまりを考へて、過なければ夜をやすくいぬべし。もし過あらば、悔いはぢて、来日の戒とすべし。是国語にいへる所、学問の法とすべし。
書き下し
一朝は師にまなび、昼は朝まなびたる事をつとめ習ひ、夕はこれをいよいよ重ね、夜は一日の間のあやまりを考へて、過なければ夜をやすくいぬべし。もし過あらば、悔いはぢて、来日の戒とすべし。是国語にいへる所、学問の法とすべし。
現代語訳
朝は師に学び、昼は朝学んだことを努めて習い、夕方はこれをいよいよ重ね、夜は一日のあいだの過ちを考えて、過ちがなければ夜は安らかに寝るべきです。もし過ちがあれば、悔い恥じて、翌日の戒めとすべきです。これは『国語』に言われていることで、学問の方法とすべきです。
解説
一日の時間割として学び方を示した短い条です。朝に教わり、昼に復習し、夕べに積み重ね、夜に一日の過ちを振り返るという流れを、益軒は中国の古典『国語』に基づくものとして紹介しています。学ぶ・練習する・振り返るという循環は、今でいう学習サイクルそのものです。寝る前に今日の失敗を一つ書き出し、明日の戒めにするだけでも、仕事や子育ての質は少しずつ変わっていくでしょう。
この章句が説くこと
学問反省習慣過ち復習
関連する章句
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『和俗童子訓』巻之二・総論下一少年にて、師にあひて物をならふに、朝は師に学び、昼は朝学びたる事を勤め、夕べはいよいよかさね習ひ、夜ふして、一日の中に口に言ひ、身に行ひたる事を顧みて、あやまちあらば、悔いて、後のいましめとすべし。
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『益軒家訓』聖学須勤凡人たるものは、聖人の教を貴び受け、強く志を立て、人の道を学び知り、勤め行ひて君子とならん事を思ひ、常に心にかけて怠るべからず。これ聖学に志すの道なり。其学問の法は、書を読み古を考へ、人に問ひ己におもひ、人の諫いましめを聴用ひ、常に我が身を顧て、我が愚なる事を知り、わが不善なる事を知り、わが過を改めて善にうつるべし。君子の過ちや日月の食の如し、過つや人皆之を見、更むるや人皆之を仰ぐ。また小人の過つや、かならず文る。過をはぢて蔽ひかくすは小人の心なり、甚卑し。古語に聖人に非ずんば誰か能く過ち無からん、過ちて能く改むる、善焉より大なるは莫しといへり。仮にも我を智ありとし、善也と思ふべからず。わが身のちからをたのみて、人を愚なりとし、侮るべからず。諫を拒ぎ、我を是とすべからず。
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『翁問答』改訂翁問答(丁亥春)若しまた世間の学者人ごとに凡情の習態をあらひすて、学問第一義の明徳を明かにして、孝悌忠信のまことあらば親は子の学問せざるをなげき君は臣下の学術なきをきらひ、学問をそしる口なきのみならず、士は云に及ばず、農人商人に至るまで、学問なくてはかなはぬ事なりともてはやすべし、さあらば世俗の学問をそしるにあらず、学者のそしるなり、学者のまねく所なり、しかるを我も人も学問するものゝくせにて、世俗の学問をそしるを聞ては、或は腹を立、或は笑ひおとしめて、そのあやまりの己より出る事をわきまへず、是をもつて見れば、学問の実義に志なき学者は、世俗の学問をそしるよりも、一きはまさりたる聖門のつみ人なるべし。
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『大和俗訓』巻之二・為学下一俗人の学問をそしるは、学者書を読んでも道を行はずして、かへりて高慢にして自らほこり、人をあなどりて心ざま悪しくなり行き、学びたる益なきが故なり。学者つつしみて身をかへりみるべし。書を読むによつて、却てかくの如くなる小人となるはくちをし。
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『和俗童子訓』巻之二・総論下放逸なるべからず。朝毎に、昨日いまだ知らざるさきを師に学びそへ、暮毎に、朝学べる事を重ね重ね勤めて、怠るべからず。心をあらくおほやうにせず、つづまやかにすこしにすべし。斯の如くに、日々に勤めて怠らざるを、学問の法とす。
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『大和俗訓』巻之三・心術上一古語に、人聖人にあらず、誰か過なからん。過まつてよく改む、善これより大なるはなしといへり。程子も、学問の道無他、其不善を知れば、速かに改めて善にしたがふのみといへり。不善とは、即過なり。過を知りて改むるは学間の要なり。されども我が過を知る人すくなし。すべて凡人は我が身に私して、其身の過と悪とを知らず、よろづの外の事は、事ごとに知らずとも、さほどのうれひにあらず。我が身の悪と過を知らざるは、はなはだ愚なるかな。是何よりも憂ふべき事ならずや。身をかへりみ、人の諫を聞きて我が過を知るべし。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
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