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童子問 / 卷中

問。何謂本然之德。曰。天下所共通行。之謂達道。君臣父子夫婦昆弟朋友之倫。是已。天下所共尊。之謂達德。仁義禮智。是巳。此天下之所同然。而根乎人心。存乎風俗。萬世不得磨滅。此之謂本然之德。佛氏之學。見此心之妙。出入變現無可奈何。故專以默坐澄心攝收精神爲事。要超脫三界不生不滅。蓋用智自私。專知有己。而不知天下萬世同然之道故也。理學者流。亦見得心性一理萬物之一原。卒以人倫日用天下萬世通行之道。爲道之用。而郤要向上面求其所以然之體。皆有見於心。而無見於道。故其學褊急險薄。不見聖人寬洪盛大之氣象。唯聖人以天下同然之道。而治天下同然之人。不以己修己。而與天下共由焉。不立異以違人。不好高以拂俗。故曰。吾非斯人之徒與。而誰與。所以爲大中至正之道也。

新字:問。何謂本然之徳。曰。天下所共通行。之謂達道。君臣父子夫婦昆弟朋友之倫。是已。天下所共尊。之謂達徳。仁義礼智。是巳。此天下之所同然。而根乎人心。存乎風俗。万世不得磨滅。此之謂本然之徳。仏氏之学。見此心之妙。出入変現無可奈何。故専以黙坐澄心摂収精神為事。要超脱三界不生不滅。蓋用智自私。専知有己。而不知天下万世同然之道故也。理学者流。亦見得心性一理万物之一原。卒以人倫日用天下万世通行之道。為道之用。而郤要向上面求其所以然之体。皆有見於心。而無見於道。故其学褊急険薄。不見聖人寛洪盛大之気象。唯聖人以天下同然之道。而治天下同然之人。不以己修己。而与天下共由焉。不立異以違人。不好高以払俗。故曰。吾非斯人之徒与。而誰与。所以為大中至正之道也。

書き下し

問ふ、何をか本然の徳と謂ふ。曰く、天下の共に通行する所、之を達道と謂ふ。君臣父子夫婦昆弟朋友の倫、是れなり。天下の共に尊ぶ所、之を達徳と謂ふ。仁義礼智、是れなり。此れ天下の同じく然る所にして、人心に根ざし、風俗に存し、万世磨滅することを得ず。此れを之れ本然の徳と謂ふ。仏氏の学は、此の心の妙、出入変現して奈何ともすべき無きを見る。故に専ら黙坐澄心、精神を摂収するを以て事と為し、三界を超脱し、生ぜず滅せざらんことを要す。蓋し智を用ひて自ら私し、専ら己有るを知りて、天下万世同然の道を知らざるが故なり。理学者流も、亦心性一理、万物の一原を見得て、卒に人倫日用、天下万世通行の道を以て、道の用と為し、却つて上面に向かひて其の然る所以の体を求めんことを要す。皆心に見ること有りて、道に見ること無し。故に其の学褊急険薄にして、聖人寛洪盛大の気象を見ず。唯だ聖人は天下同然の道を以て、天下同然の人を治む。己を以て己を修めずして、天下と共に由る。異を立てて以て人に違はず、高きを好みて以て俗に拂らず。故に曰く、吾斯の人の徒と与にするに非ずして、誰と与にせんと。大中至正の道為る所以なり。

現代語訳

問う。本然の徳とは何を言うのか。答えていう。天下がともに通り行うものを達道という。君臣・父子・夫婦・兄弟・朋友の倫がそれである。天下がともに尊ぶものを達徳という。仁義礼智がそれである。これは天下が同じくそうであるもので、人の心に根ざし、風俗のうちにあり、万世にわたって消え去ることがない。これを本然の徳という。仏教の学は、この心の霊妙さが出たり入ったり変わり現れて、どうにも捉えられないのを見た。だからもっぱら黙って坐り心を澄まし、精神を収めることを仕事とし、三界を超え出て、生じも滅しもしない境地を求める。思うに、知恵を用いて自分を私し、ただ自分があることだけを知って、天下万世に共通する道を知らないからである。理学者の流れもまた、心と性が一つの理であり万物の一つの源であることを見て取り、ついには人倫日用、天下万世に通り行われる道を道の働き(用)とし、かえってその上にそれがそうである所以の本体を求めようとする。みな心については見るところがあっても、道については見るところがない。だからその学問は狭くせっかちで険しく薄く、聖人の寛く大らかで盛大な気象が見られない。ただ聖人は、天下に共通する道によって、天下に共通する人を治める。自分ひとりの考えで自分を修めるのではなく、天下の人々とともにその道に由る。人と違ったことをして人に背かず、高尚を好んで世俗に逆らわない。だから孔子は「私はこの人々とともにするのでなければ、いったい誰とともにしようか」と言った。これが大中至正の道である理由である。

解説

本然の徳とは何かを問われ、仁斎は五倫の達道と仁義礼智の達徳を挙げる。それは天下に共通し、人心に根ざし風俗のうちにあって、万世消えないものである。仏教は心の霊妙さに目を奪われて坐禅で心を澄まし、理学は人倫日用を道の用にすぎないとしてその上に本体を求めた。どちらも心は見ても道を見ず、学問が狭く険しくなったという。聖人は天下共通の道で天下の人を治め、人と違うことをせず世俗に逆らわない。人々とともに歩む大中至正の道を説くこの章は、自分だけの高尚さより周りの人と共有できる道理を大切にせよと教える。

この章句が説くこと

徳達道達徳仁義人倫大中至正

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