童子問 / 卷中
問守儉之方。曰。人家之奢。大抵生於閨門。閨門之奢。生於丈夫軟弱。失駕御之道。丈夫能嚴而有節制。則閨門自肅。而奢亦不生。是守儉之要也。然閨門之奢。不過熬財靡物。男子之奢。不至亡國敗家。則不已。男子氣質柔軟。少年之氣不除。則忘拘檢縱貪慾。不喜近端慤方正之士。墜志廢業。遊惰放縱。無所不至。乃衆惡之淵藪也。
新字:問守倹之方。曰。人家之奢。大抵生於閨門。閨門之奢。生於丈夫軟弱。失駕御之道。丈夫能厳而有節制。則閨門自粛。而奢亦不生。是守倹之要也。然閨門之奢。不過熬財靡物。男子之奢。不至亡国敗家。則不已。男子気質柔軟。少年之気不除。則忘拘検縦貪慾。不喜近端慤方正之士。墜志廃業。遊惰放縦。無所不至。乃衆悪之淵藪也。
書き下し
倹を守るの方を問ふ。曰く、人家の奢は、大抵閨門より生ず。閨門の奢は、丈夫の軟弱にして、駕御の道を失ふより生ず。丈夫能く厳にして節制有れば、則ち閨門自ら粛みて、奢も亦生ぜず。是れ倹を守るの要なり。然れども閨門の奢は、財を熬り物を靡すに過ぎず。男子の奢は、国を亡ぼし家を敗るに至らざれば、則ち已まず。男子気質柔軟にして、少年の気除かざれば、則ち拘検を忘れ貪慾を縦にし、端慤方正の士に近づくことを喜ばず、志を墜し業を廃し、遊惰放縦、至らざる所無し。乃ち衆悪の淵藪なり。
現代語訳
倹約を守る方法を問うた。答えていう。家の奢りは、たいてい奥向き(家庭の内)から生じる。奥向きの奢りは、一家の主人が軟弱で、家を取りしきる道を失っていることから生じる。主人が厳しく節度をもっていれば、奥向きは自然と引き締まり、奢りも生じない。これが倹約を守る要である。しかし奥向きの奢りは、財を費やし物を浪費する程度にすぎない。男子の奢りは、国を亡ぼし家を破るところまで行かなければ止まない。男子が気質柔弱で、若者の浮ついた気が抜けなければ、身を慎むことを忘れて欲をほしいままにし、誠実で方正な人に近づくことを喜ばず、志を落とし家業を捨て、遊び怠けほしいままにして、行かないところはない。まさにもろもろの悪の集まるところである。
解説
この章句が説くこと
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『童子問』卷中問ふ。国家承平日久しく、人皆安肆にして互ひに奢侈を以て相尚ぶ。其の久しきに及ぶや、習ひて以て風を成し、人其の奢靡たるを知らず。今遽かに節倹を以て之を治めんと欲すれば、則ち恐らくは人の遽かに従ひ難からん。如何。曰く、君子の徳は風なり、小人の徳は草なり。草之に風を尚ふれば、必ず偃す。民は其の令する所に従はずして、其の好む所に従ふ。顧ふに上の好む所如何に在るのみ。孔子曰く、上礼を好めば、則ち民敢へて敬せざる莫し。上義を好めば、則ち民敢へて服せざる莫し。上信を好めば、則ち民敢へて情を用ひざる莫し、と。皆上の好む所を謹むに在るのみ。上自ら華靡を好みて、下の節倹を欲せば、厳刑峻法以て之を縄すと雖も、而も得べからざるなり。苟も上自ら倹を好めば、則ち令せずして行はる。滕の文公古礼を行はんと欲す。父兄百官皆欲せず。其の卒るや、四方風動するに至り、路に遺ちたるを拾はざるの効有り。故に其の下に令せんと欲せば、則ち須要く其の好む所を謹むべし。上実に節倹を好まば、則ち何ぞ下の従はざるを憂へん。
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『十善法語』巻第八・不貪欲戒箕子カ紂王ノ象箸ヲ為テ嘆スル。孟子カ梁恵王ヲ見テ。王何必言利ト云フ。左伝荘公二十四年。魯大夫御孫カ言ニ。倹徳之共也。修悪之大也ト。論語ニ季康子盗ノ多ヲ憂テ。コレヲ孔子ニ問フ。孔子答フ苟子之不欲。雖賞之不窃トアル。老子ニ不貴難得之貨使民不為盗。不見可欲使心不乱トアル。周書ニ不貴異物賤用物民乃足。犬馬非其土性不畜。珍禽奇獣不育于圃。不実遠物則遠人格等トアル。此類ミナ千古ノ格言デ。此戒ノ戒相ナルシヤ。
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『童子問』卷中問ふ。斑固盛んに文帝の倹を称す。古の王者も、亦倹を尚ぶか。曰く、王道は倹を以て本と為す。蓋し奢れば則ち給らず、倹なれば則ち贏り有り。以て我の有余を以て、人人の不足を拯ふべし。己苟も足らずんば、則ち安んぞ能く人の不足を補はん。伝に称す、堯は土階三尺、茅茨剪らず、采椽断たず、監門の食と雖も飽かず、と。未だ必ずしも其の言のごとくならずと雖も、然れども此に由りて以て堯の倹徳を見るべし。孔子曰く、禹は吾間然すること無し。飲食を菲くして、孝を鬼神に致し、衣服を悪しくして、美を黻冕に致し、宮室を卑くして、力を溝洫に尽くす、と。古先の聖王は皆躬自ら倹を務むる者は、蓋し民を養ふの本を植うるなり。故に王道は倹を以て本と為す。文帝紀を観るに、今年の田租の半ばを賜ふと書する者二、田の租税を除くと書する者一。豈に帝躬ら節倹を務めて、軽々しく天下の財を用ひざるの験に非ずや。斯の時に於て、天下富庶にして、黎民乂安し、漢家四百年の国祚を延長せしは、皆文帝の節倹を務めし効なり。
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『童子問』卷中問ふ。聖賢の深く聚斂を戒むる所以の者は、何ぞや。曰く、民の怨みを取る所以の者は、聚斂より甚だしきは莫し。夫れ小人の君に事ふるや、聚斂掊克し、唯君を知りて、民の為にするを知らず。殊に知らず、民の為にする者は、便ち君の為にするの実なる所以なることを。未だ民の為にして、君の為にせざる者有らざるなり。又未だ民の為にせずして、能く君の為にする者有らざるなり。故に少しく民の為にすれば、則ち少しく効有り。大いに民の為にすれば、則ち大いに効有り。昔馮驩孟嘗君の為に薛の債券を焚く。後朞年にして孟嘗君相を免ぜられ、国に薛に就く。未だ百里に至らざるに、民老を扶け幼を携へて以て迎ふ。夫れ券を焚くは細事なり。然れども其の民心を得ること、尚ほ此くのごとし。矧んや此より大なる者をや。苟も上聚斂を好めば、則ち民必ず怨む。怨みて已まざれば、則ち怒る。怒れば則ち離る。離るれば則ち叛く。鹿台の財、郿塢の金有りと雖も、豈に能く得て己の有と為さんや。夫れ倹なれば則ち余り有り。余り有れば則ち以て人に施すに足る。奢れば則ち足らず。足らざれば則ち聚斂せざること能はず。此れ聖人の倹を尚びて聚斂を戒むる所以なり。
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『呻吟語』内篇・存心・儉なれば則ち約、侈なれば則ち肆儉なれば則ち約、約なれば則ち百善俱に興る。侈なれば則ち肆、肆なれば則ち百惡俱に縱にす。
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『童子問』卷中問ふ。夫の倹を好む者を観るに、大抵皆吝嗇なるは、何ぞや。曰く、倹と嗇とは、其の迹相似て、其の心実に相反す。倹は善の基、嗇は欲の叢なり。倹にして施しを好む者は、真の倹なり。倹にして施すことを知らざるは、亦嗇なるのみ。古人の倹を務むる者は、其の施さんが為なり。倹にして施すことを知らざるは、倹と謂ふべからず。世の鄙夫、倹に託して夫の奢る者を詆るは、一噱に附すべし。倹にして施しを好む者は、誠に大徳の人為り。倹にして施すことを知らざる者は、真の守銭虜なるのみ。
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