童子問 / 卷中
問。聖賢所以深戒聚歛者。何哉。曰。所以取民之怨者。莫甚於聚斂。夫小人之事君也。聚歛掊克。唯知君。而不知爲民。殊不知爲民者。便所以爲君之實也。未有爲民。而不爲君者也。又未有不爲民。而能爲君者也。故少爲民。則少有效。大爲民。則大有效。昔馮驩爲孟甞君焚薛債劵。後朞年孟甞君免相。就國于薛。未至百里。民扶老攜幼以迎。夫焚劵細事也。然其得民心。尙如此。矧大於此者乎。苟上好聚歛。則民必怨。怨而不已。則怒。怒則離。離則叛。雖有鹿臺之財。郿塢之金。豈能得爲己之有乎。夫儉則有餘。有餘則足以施人。奢則不足。不足則不能不聚歛。此聖人之所以尙儉而戒聚斂也。
新字:問。聖賢所以深戒聚歛者。何哉。曰。所以取民之怨者。莫甚於聚斂。夫小人之事君也。聚歛掊克。唯知君。而不知為民。殊不知為民者。便所以為君之実也。未有為民。而不為君者也。又未有不為民。而能為君者也。故少為民。則少有効。大為民。則大有効。昔馮驩為孟甞君焚薛債劵。後朞年孟甞君免相。就国于薛。未至百里。民扶老攜幼以迎。夫焚劵細事也。然其得民心。尚如此。矧大於此者乎。苟上好聚歛。則民必怨。怨而不已。則怒。怒則離。離則叛。雖有鹿台之財。郿塢之金。豈能得為己之有乎。夫倹則有余。有余則足以施人。奢則不足。不足則不能不聚歛。此聖人之所以尚倹而戒聚斂也。
書き下し
問ふ。聖賢の深く聚斂を戒むる所以の者は、何ぞや。曰く、民の怨みを取る所以の者は、聚斂より甚だしきは莫し。夫れ小人の君に事ふるや、聚斂掊克し、唯君を知りて、民の為にするを知らず。殊に知らず、民の為にする者は、便ち君の為にするの実なる所以なることを。未だ民の為にして、君の為にせざる者有らざるなり。又未だ民の為にせずして、能く君の為にする者有らざるなり。故に少しく民の為にすれば、則ち少しく効有り。大いに民の為にすれば、則ち大いに効有り。昔馮驩孟嘗君の為に薛の債券を焚く。後朞年にして孟嘗君相を免ぜられ、国に薛に就く。未だ百里に至らざるに、民老を扶け幼を携へて以て迎ふ。夫れ券を焚くは細事なり。然れども其の民心を得ること、尚ほ此くのごとし。矧んや此より大なる者をや。苟も上聚斂を好めば、則ち民必ず怨む。怨みて已まざれば、則ち怒る。怒れば則ち離る。離るれば則ち叛く。鹿台の財、郿塢の金有りと雖も、豈に能く得て己の有と為さんや。夫れ倹なれば則ち余り有り。余り有れば則ち以て人に施すに足る。奢れば則ち足らず。足らざれば則ち聚斂せざること能はず。此れ聖人の倹を尚びて聚斂を戒むる所以なり。
現代語訳
問う。聖賢が搾り取りを深く戒めるのはなぜか。答える。民の怨みを買うことで、搾り取りよりひどいものはない。そもそも小人が君に仕えるときは、厳しく取り立てて、ただ君のことだけを知り、民のためにすることを知らない。民のためにすることが、そのまま君のためにすることの実質であることをまったく知らないのである。民のためにして君のためにならなかった者はいない。また民のためにしないで君のためになった者もいない。だから少し民のためにすれば少し効果があり、大いに民のためにすれば大いに効果がある。昔、馮驩は孟嘗君のために薛の民の借金証文を焼き捨てた。一年後、孟嘗君が宰相を免ぜられて領地の薛に向かうと、まだ百里も手前で、民が老人を助け幼子の手を引いて出迎えた。証文を焼くのは小さなことである。それでも民の心を得ることはこのようであった。ましてそれより大きなことならばなおさらである。もし上の者が搾り取りを好めば、民は必ず怨む。怨みがやまなければ怒り、怒れば離れ、離れれば背く。殷の紂王の鹿台の財宝や、董卓の郿塢の黄金があっても、どうして自分のものにしておけようか。そもそも倹約すれば余りがあり、余りがあれば人に施すことができる。奢れば足りなくなり、足りなければ搾り取らずにはいられない。これが聖人が倹約を尊び、搾り取りを戒める理由である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『童子問』卷中問ふ。夫の倹を好む者を観るに、大抵皆吝嗇なるは、何ぞや。曰く、倹と嗇とは、其の迹相似て、其の心実に相反す。倹は善の基、嗇は欲の叢なり。倹にして施しを好む者は、真の倹なり。倹にして施すことを知らざるは、亦嗇なるのみ。古人の倹を務むる者は、其の施さんが為なり。倹にして施すことを知らざるは、倹と謂ふべからず。世の鄙夫、倹に託して夫の奢る者を詆るは、一噱に附すべし。倹にして施しを好む者は、誠に大徳の人為り。倹にして施すことを知らざる者は、真の守銭虜なるのみ。
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『童子問』卷中問ふ。国家承平日久しく、人皆安肆にして互ひに奢侈を以て相尚ぶ。其の久しきに及ぶや、習ひて以て風を成し、人其の奢靡たるを知らず。今遽かに節倹を以て之を治めんと欲すれば、則ち恐らくは人の遽かに従ひ難からん。如何。曰く、君子の徳は風なり、小人の徳は草なり。草之に風を尚ふれば、必ず偃す。民は其の令する所に従はずして、其の好む所に従ふ。顧ふに上の好む所如何に在るのみ。孔子曰く、上礼を好めば、則ち民敢へて敬せざる莫し。上義を好めば、則ち民敢へて服せざる莫し。上信を好めば、則ち民敢へて情を用ひざる莫し、と。皆上の好む所を謹むに在るのみ。上自ら華靡を好みて、下の節倹を欲せば、厳刑峻法以て之を縄すと雖も、而も得べからざるなり。苟も上自ら倹を好めば、則ち令せずして行はる。滕の文公古礼を行はんと欲す。父兄百官皆欲せず。其の卒るや、四方風動するに至り、路に遺ちたるを拾はざるの効有り。故に其の下に令せんと欲せば、則ち須要く其の好む所を謹むべし。上実に節倹を好まば、則ち何ぞ下の従はざるを憂へん。
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『童子問』卷中問ふ。斑固盛んに文帝の倹を称す。古の王者も、亦倹を尚ぶか。曰く、王道は倹を以て本と為す。蓋し奢れば則ち給らず、倹なれば則ち贏り有り。以て我の有余を以て、人人の不足を拯ふべし。己苟も足らずんば、則ち安んぞ能く人の不足を補はん。伝に称す、堯は土階三尺、茅茨剪らず、采椽断たず、監門の食と雖も飽かず、と。未だ必ずしも其の言のごとくならずと雖も、然れども此に由りて以て堯の倹徳を見るべし。孔子曰く、禹は吾間然すること無し。飲食を菲くして、孝を鬼神に致し、衣服を悪しくして、美を黻冕に致し、宮室を卑くして、力を溝洫に尽くす、と。古先の聖王は皆躬自ら倹を務むる者は、蓋し民を養ふの本を植うるなり。故に王道は倹を以て本と為す。文帝紀を観るに、今年の田租の半ばを賜ふと書する者二、田の租税を除くと書する者一。豈に帝躬ら節倹を務めて、軽々しく天下の財を用ひざるの験に非ずや。斯の時に於て、天下富庶にして、黎民乂安し、漢家四百年の国祚を延長せしは、皆文帝の節倹を務めし効なり。
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『十善法語』巻第八・不貪欲戒箕子カ紂王ノ象箸ヲ為テ嘆スル。孟子カ梁恵王ヲ見テ。王何必言利ト云フ。左伝荘公二十四年。魯大夫御孫カ言ニ。倹徳之共也。修悪之大也ト。論語ニ季康子盗ノ多ヲ憂テ。コレヲ孔子ニ問フ。孔子答フ苟子之不欲。雖賞之不窃トアル。老子ニ不貴難得之貨使民不為盗。不見可欲使心不乱トアル。周書ニ不貴異物賤用物民乃足。犬馬非其土性不畜。珍禽奇獣不育于圃。不実遠物則遠人格等トアル。此類ミナ千古ノ格言デ。此戒ノ戒相ナルシヤ。
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『呻吟語』内篇・存心・儉なれば則ち約、侈なれば則ち肆儉なれば則ち約、約なれば則ち百善俱に興る。侈なれば則ち肆、肆なれば則ち百惡俱に縱にす。
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『童子問』卷中身を守るの法を問ふ。曰く、節倹を要と為す。夫れ倹は万善の本、奢は衆悪の基なり。惟だに其の身の成敗の分かるる所のみに非ず。其の家倹なれば則ち福慶子孫に流れ、奢なれば則ち凶禍後嗣に伝ふ。慎まざるべけんや。
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