童子問 / 卷上
問。先生說論語之道理。於道不遠人之旨。委曲詳悉。無復餘蘊。此外亦有何所說。曰。子觀夫醫人之療病乎。前醫誤治。變爲壞證者。必先用平劑。而後審其病因。而施藥。今予之所以告子者。皆拯壞證之權劑。而非治病之的方。直考諸古人之正方。可也。
新字:問。先生説論語之道理。於道不遠人之旨。委曲詳悉。無復余蘊。此外亦有何所説。曰。子観夫医人之療病乎。前医誤治。変為壊証者。必先用平剤。而後審其病因。而施薬。今予之所以告子者。皆拯壊証之権剤。而非治病之的方。直考諸古人之正方。可也。
書き下し
問ふ、先生論語の道理を説くこと、道は人に遠からずの旨に於て、委曲詳悉にして、復た余蘊無し。此の外に亦何の説く所か有る。曰く、子、夫の医人の病を療するを観るか。前医誤り治して、変じて壊証と為る者は、必ず先づ平剤を用ひて、而る後に其の病因を審らかにして薬を施す。今予の子に告ぐる所以の者は、皆壊証を拯ふの権剤にして、病を治するの的方に非ず。直ちに諸を古人の正方に考へて可なり。
現代語訳
問う。先生が『論語』の道理を説かれるのは、「道は人から遠くない」という趣旨について、委細を尽くして詳しく、もはや言い残したところがない。このほかに、さらに何か説くことがあるのか。答える。あなたは医者が病気を治療するのを見たことがあるか。前の医者が誤った治療をして、病状がこじれて悪化した者には、必ずまず穏やかな薬を用い、そのうえでその病因を見極めて薬を施す。いま私があなたに語っていることは、すべてこじれた病状を救うための応急の薬であって、病を治す本来の処方ではない。直接に古人の正しい処方に当たって考えればよい。
解説
仁斎が自分の議論の位置づけを、医療のたとえで語った印象深い章である。後世の誤った学説によってこじれた学問の病に対し、自分の言葉はまず状態を落ち着かせるための応急の薬にすぎないという。本当の処方は古人、すなわち孔子・孟子の書そのものにあり、学ぶ者はそこに直接当たるべきだと勧める。自説を絶対視せず、原典へと読者を導く謙虚な姿勢がうかがえる。私たちも解説書や他人のまとめに頼り切らず、一次情報や原典に当たる習慣を大事にしたい。
この章句が説くこと
学問論語孟子原典古義処方
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