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童子問 / 卷上

問。然則。敎貴於性歟。曰。奚其然。雖有善敎。然而。使人之性不善。若犬馬之與我不同類。則與道扞格不相入。惟其善。故見善則悅。見不善則嫉。見君子則貴之。見小人則賤之。雖盜賊之至不仁。亦莫不然。是敎之所以由而入也。雖蠻貊無敎之邦。叔季絕學之世。人不皆化爲鬼爲魊者。性之善故也。性之善。豈可不貴耶。

新字:問。然則。教貴於性歟。曰。奚其然。雖有善教。然而。使人之性不善。若犬馬之与我不同類。則与道扞格不相入。惟其善。故見善則悦。見不善則嫉。見君子則貴之。見小人則賤之。雖盗賊之至不仁。亦莫不然。是教之所以由而入也。雖蠻貊無教之邦。叔季絶学之世。人不皆化為鬼為魊者。性之善故也。性之善。豈可不貴耶。

書き下し

問ふ、然らば則ち教は性より貴きかと。曰く、奚ぞ其れ然らん。善教有りと雖も、然り而して、人の性をして不善にして、犬馬の我と類を同じくせざるが若くならしめば、則ち道と扞格して相入らず。惟だ其れ善なり。故に善を見れば則ち悦び、不善を見れば則ち嫉み、君子を見れば則ち之を貴び、小人を見れば則ち之を賤しむ。盗賊の至つて不仁なると雖も、亦た然らざること莫し。是れ教の由りて入る所以なり。蛮貊無教の邦、叔季絶学の世と雖も、人皆化して鬼と為り魊と為らざる者は、性の善なるが故なり。性の善、豈に貴ばざるべけんや。

現代語訳

問う。「それならば、教は性より貴いのでしょうか。」答えて言う。「どうしてそうであろうか。よい教えがあっても、もし人の性が不善で、犬や馬が人間と同類でないようなものであれば、道と食い違って受け入れられない。ただ性が善いからこそ、善を見れば喜び、不善を見れば憎み、君子を見れば尊び、小人を見れば卑しむのである。この上なく不仁な盗賊でさえ、そうでないことはない。これが教えが入っていく拠りどころである。教えのない未開の国、学問の絶えた末世であっても、人が皆化けて鬼や魊(人を害する妖怪)にならないのは、性が善いからである。性の善をどうして貴ばずにいられようか。」

解説

前章で教の重要性を説いた仁斎は、ここで振り子を戻し、性の善を重んじる。どれほど善い教えがあっても、人の性が犬馬のように異質なら、教えは道と食い違って入っていかない。善を見て喜び、不善を見て嫉むという心は、極悪の盗賊にさえある。教えのない土地や学問の絶えた時代でも人が鬼にならないのは、この善い性があるからだ。教と性は優劣を競うものではなく、相互に支え合うものだと分かる。人を育てる立場にある人は、相手の内にある善を見る心を信じることから、教えを始めたい。

この章句が説くこと

性善教善君子盗賊育成

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