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大学或問 / 『大学或問』式は法度ではなく恥で守る

(問)式は何と定むべきや、 (答)武士より出たる者の道を知て人情事變に達せる人を式を定る司とし、和洋の事に博學なるものをまじへ、數十箇條を記し、君及び老臣上士中士下士近く坐して議論講明し、損益の思ひ寄を述、君と司と道理の定る所を决して謄書せしむ、猶又諸國に下知して所と人情との同異を聞、賢才の者の昌言を得て損益す、世の中五十年には小變し、五百年には大變す、古の式今に用ふべきことあり、用ふべからざる事あり、式は法度に非ず、法度は數少きを善なりとす、漢の高祖法三章を約して天下大に定れり、或は委しければ、世の中無事に成て貴賤共に安し、法に背きたるものは罰あり、式に背たるものは罰なし、恥とするのみ、恥かさなれば人前なりがたし、故に罰せざれどもたつものなり、

新字:(問)式は何と定むべきや、 (答)武士より出たる者の道を知て人情事変に達せる人を式を定る司とし、和洋の事に博学なるものをまじへ、数十箇条を記し、君及び老臣上士中士下士近く坐して議論講明し、損益の思ひ寄を述、君と司と道理の定る所を決して謄書せしむ、猶又諸国に下知して所と人情との同異を聞、賢才の者の昌言を得て損益す、世の中五十年には小変し、五百年には大変す、古の式今に用ふべきことあり、用ふべからざる事あり、式は法度に非ず、法度は数少きを善なりとす、漢の高祖法三章を約して天下大に定れり、或は委しければ、世の中無事に成て貴賤共に安し、法に背きたるものは罰あり、式に背たるものは罰なし、恥とするのみ、恥かさなれば人前なりがたし、故に罰せざれどもたつものなり、

書き下し

(問)式は何と定むべきや、 (答)武士より出たる者の道を知て人情事變に達せる人を式を定る司とし、和洋の事に博學なるものをまじへ、數十箇條を記し、君及び老臣上士中士下士近く坐して議論講明し、損益の思ひ寄を述、君と司と道理の定る所を决して謄書せしむ、猶又諸國に下知して所と人情との同異を聞、賢才の者の昌言を得て損益す、世の中五十年には小變し、五百年には大變す、古の式今に用ふべきことあり、用ふべからざる事あり、式は法度に非ず、法度は數少きを善なりとす、漢の高祖法三章を約して天下大に定れり、或は委しければ、世の中無事に成て貴賤共に安し、法に背きたるものは罰あり、式に背たるものは罰なし、恥とするのみ、恥かさなれば人前なりがたし、故に罰せざれどもたつものなり、

現代語訳

問う。式(礼式)はどのように定めるべきか。 答える。武士の出身で、道を知り人情と世の変事に通じた人を、式を定める役目の長とし、和漢洋の事に博学な者を交えて、数十箇条を記す。君と老臣、上士・中士・下士が近く座って議論し、講じて明らかにし、損益について思いつきを述べ、君と役目の長が道理の定まる所を決して、書き写させる。なお諸国にも通達して、土地と人情の同異を聞き、賢く才ある者のよい意見を得て、増減する。世の中は五十年で小さく変わり、五百年で大きく変わる。古い式は、今に用いるべきこともあり、用いるべきでないこともある。式は法度ではない。法度は数が少ないのを善しとする。漢の高祖は法三章に約して、天下が大いに定まった。あるいは詳しければ、世の中が無事になって、貴賤とも安らかである。法に背いた者には罰がある。式に背いた者に罰はない。恥とするだけである。恥が深ければ、人前に出られない。だから罰しなくても成り立つのである。

解説

蕃山は、礼式を法度(罰則つきの規則)と分けています。法度は数が少ないほどよく、式に背いても罰はなく、恥によって保たれるという考えです。式の制定は現場を知る人を中心に、上下の者が近く座って議論し、諸国の意見も聞いて決め、世の変化に合わせて増減すると述べます。組織の規則やマナーに置き換えると、罰則で縛る規則は最小限にとどめ、意見を募って作った行動の作法を、恥じる心で守らせるという形になります。制度は人と時勢に合わせて直す、という姿勢も読み取れます。
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この章句が説くこと

式法度恥損益法三章世の変化

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