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大学或問 / 『大学或問』礼の贈答と使者の定め

(問)式の條目古今に用ふべきありや、 (答)君臣に賜ふ事あれば拜して受、使者を門內迄送る、使者歸て後君所に往て忝き事を拜す、大臣士に賜する時は受て拜す、使者を戶口まで送る、行て拜せず、もし他行の時來れば往て拜す、病を問喪を吊は互の事なり、報禮の義なし、人禮有て來る時は我も禮有て往く、禮の贈りものは返し、志の贈りものは返しせず、我か家に冠婚などの事ありて人贈りものする時は、又人の家に冠婚ある時贈り物す、德ある人は人に贈るに言を以てす、富るものは人を助るに財を以てす、老者は勞を用ひず、貧者は財の報せず、人無音をとふときは我も亦後日無音を問べし、人來て我家になき時は往て拜す、先の人亦家になしといへども又來るべからず、使にも及ばず、人を訪て家になき時報禮に來るべからず、後日に約して參會せんといはゞ其意に任せて可なり、禮は三度を極とす、一度を禮辭といふ、二度を固辭といふ、三度を終辭といふ、主人客を禮す、客着べき座なれども一度は辭す、是禮なり、主人又禮するときは客辭せずして座につく、客重て辭するを固辭とす、主人强て禮す、客辭すべからず、故ありて三度する時は終辭なり、主人强ずして客の下につく、着すべき座を終辭するは禮にあらず、主人を病しむといふ、人の賜を辭し官祿を辭するも同し、受まじき義あれば終辭す、受べきものなれば終辭せず、他は推して知るべし、式定る時は逐一條數あり、鎌倉の時代の大名の家に鎌倉の式を用ひて記せるあり、其中に今も用ふべき事あらん、諸矦三番にして三年に一度參府あり、農業の時を除て遠近の定めあり、道中時を同しうせず、路をいそがす、在國のときは一年に一度の使者を以て太刀馬代を獻ず、正月中に府に到る、

新字:(問)式の条目古今に用ふべきありや、 (答)君臣に賜ふ事あれば拝して受、使者を門内迄送る、使者帰て後君所に往て忝き事を拝す、大臣士に賜する時は受て拝す、使者を戸口まで送る、行て拝せず、もし他行の時来れば往て拝す、病を問喪を吊は互の事なり、報礼の義なし、人礼有て来る時は我も礼有て往く、礼の贈りものは返し、志の贈りものは返しせず、我か家に冠婚などの事ありて人贈りものする時は、又人の家に冠婚ある時贈り物す、徳ある人は人に贈るに言を以てす、富るものは人を助るに財を以てす、老者は労を用ひず、貧者は財の報せず、人無音をとふときは我も亦後日無音を問べし、人来て我家になき時は往て拝す、先の人亦家になしといへども又来るべからず、使にも及ばず、人を訪て家になき時報礼に来るべからず、後日に約して参会せんといはゞ其意に任せて可なり、礼は三度を極とす、一度を礼辞といふ、二度を固辞といふ、三度を終辞といふ、主人客を礼す、客着べき座なれども一度は辞す、是礼なり、主人又礼するときは客辞せずして座につく、客重て辞するを固辞とす、主人強て礼す、客辞すべからず、故ありて三度する時は終辞なり、主人強ずして客の下につく、着すべき座を終辞するは礼にあらず、主人を病しむといふ、人の賜を辞し官禄を辞するも同し、受まじき義あれば終辞す、受べきものなれば終辞せず、他は推して知るべし、式定る時は逐一条数あり、鎌倉の時代の大名の家に鎌倉の式を用ひて記せるあり、其中に今も用ふべき事あらん、諸矦三番にして三年に一度参府あり、農業の時を除て遠近の定めあり、道中時を同しうせず、路をいそがす、在国のときは一年に一度の使者を以て太刀馬代を献ず、正月中に府に到る、

書き下し

(問)式の條目古今に用ふべきありや、 (答)君臣に賜ふ事あれば拜して受、使者を門內迄送る、使者歸て後君所に往て忝き事を拜す、大臣士に賜する時は受て拜す、使者を戶口まで送る、行て拜せず、もし他行の時來れば往て拜す、病を問喪を吊は互の事なり、報禮の義なし、人禮有て來る時は我も禮有て往く、禮の贈りものは返し、志の贈りものは返しせず、我か家に冠婚などの事ありて人贈りものする時は、又人の家に冠婚ある時贈り物す、德ある人は人に贈るに言を以てす、富るものは人を助るに財を以てす、老者は勞を用ひず、貧者は財の報せず、人無音をとふときは我も亦後日無音を問べし、人來て我家になき時は往て拜す、先の人亦家になしといへども又來るべからず、使にも及ばず、人を訪て家になき時報禮に來るべからず、後日に約して參會せんといはゞ其意に任せて可なり、禮は三度を極とす、一度を禮辭といふ、二度を固辭といふ、三度を終辭といふ、主人客を禮す、客着べき座なれども一度は辭す、是禮なり、主人又禮するときは客辭せずして座につく、客重て辭するを固辭とす、主人强て禮す、客辭すべからず、故ありて三度する時は終辭なり、主人强ずして客の下につく、着すべき座を終辭するは禮にあらず、主人を病しむといふ、人の賜を辭し官祿を辭するも同し、受まじき義あれば終辭す、受べきものなれば終辭せず、他は推して知るべし、式定る時は逐一條數あり、鎌倉の時代の大名の家に鎌倉の式を用ひて記せるあり、其中に今も用ふべき事あらん、諸矦三番にして三年に一度參府あり、農業の時を除て遠近の定めあり、道中時を同しうせず、路をいそがす、在國のときは一年に一度の使者を以て太刀馬代を獻ず、正月中に府に到る、

現代語訳

問う。式の条目で、古今に用いるべきものはあるか。 答える。君から臣に物を賜ることがあれば、拝して受け、使者を門内まで送る。使者が帰ったあと、君の所へ行って、かたじけなさを拝謝する。大臣が士に賜るときは、受けて拝し、使者を戸口まで送る。行って拝謝はしない。もし外出中に来た場合は、行って拝する。病を見舞い、喪を弔うのは互いのことで、返礼の義はない。人が礼をもって来るときは、自分も礼をもって行く。礼の贈り物は返し、志の贈り物は返さない。自分の家に冠婚などのことがあって人が贈り物をすれば、その人の家に冠婚があるときに贈り物をする。徳のある人は人に言葉を贈り、富む者は財で人を助ける。老人は労力を用いず、貧しい者は財で報いない。人が久しく便りをよこさないときは、自分もまた後日、便りを問うのがよい。人が来て自分が家にいなかったときは、行って拝する。先方もまた家にいなくても、また来てはならない。使いにも及ばない。人を訪ねて家にいなかったときは、返礼に来てはならない。後日に約束して会おうと言えば、その意に任せてよい。礼は三度を限りとする。一度を礼辞といい、二度を固辞といい、三度を終辞という。主人が客に礼をする。客がつくべき座であっても、一度は辞する。これが礼である。主人がまた礼をするときは、客は辞さずに座につく。客が重ねて辞するのを固辞とする。主人が強いて礼をすれば、客は辞してはならない。事情があって三度するときは終辞である。主人は強いず、客の下の席につく。つくべき座を終辞するのは礼ではない。主人を悩ませるという。人の賜り物を辞し、官禄を辞すのも同じである。受けてはならない義があれば終辞する。受けてよいものであれば終辞しない。他は推して知るべきである。式が定まるときは、逐一条数がある。鎌倉時代の大名の家に、鎌倉の式を用いて記したものがある。その中に今も用いるべきことがあるだろう。諸侯は三番に分けて、三年に一度、参府する。農業の時期を除き、遠近の定めがある。道中は時を同じくせず、道を急がない。在国のときは、一年に一度、使者をもって太刀と馬代を献上する。正月中に府に着く。

解説

ここでは、贈答や訪問、辞退の作法が、具体的に定められています。ポイントは、礼を返すものと返さないものの区別、行き違いのとき重ねて訪ねない配慮、辞退は三度までという限度です。双方に負担をかけない簡素さが貫かれています。現代の贈答、挨拶回り、断り方にも通じる実用的な知恵です。礼を尽くすことと、相手に余計な手間をかけさせないことを両立させる姿勢は、ビジネスの儀礼を見直すときの基準になります。形式が目的化していないかを問い直す手がかりになるでしょう。
『人生の方程式』の表紙

人生を、一行の式にしてみた。

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この章句が説くこと

礼辞固辞終辞贈答使者礼の返し

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